オランダ

オランダ:アムステルダム

フリードリヒス カオル

職業…フリーライター

居住都市…アムステルダム市(オランダ)

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12月2日、オランダのアルメーレ市で、かつてない事件が起こりました。同市の青少年サッカー・チーム専属の審判員が、対戦相手チームの選手ら(15歳と16歳)から言いがかりをつけられて殴られ、命を落としてしまったのです。衝撃的なこのニュースは、国内だけでなく、世界各国へも即刻報道され、多くの反響を呼ぶ事件となりました。


スポーツ精神に則って試合を行なうべき!

スポーツ精神に則って試合を行なうべき!

サッカーは、青少年の間で、もっともポピュラーなスポーツ。各市には、青少年のためのサッカークラブが、最低でも5つあるといわれ、10人の子供(小学生男女)の5人がサッカーを稽古事として行なっているといわれます。サッカーを通じて、身体を動かすことはもちろんですが、チームワークについてや礼儀を学んだり、心を鍛えるためにも、非常に大切なスポーツとされています。


それではなぜ、このような悲劇が起こってしまったのでしょうか。亡くなった審判員の、リシャールド・ニウエンハウゼン氏は、大のサッカー好きで、自分の息子が所属するチーム「バウテン・ボーイズBuiten Boys」のボランティアとして長い間、審判員を務めていました。12月2日の対戦相手は、アムステルダムからやってきた、「ニュー・スローテン Nieuw Sloten」というチーム。気温1度の寒い中、ニウエンハウゼン氏は、いつものように審判をきちんと務めていたそうです。


サッカーと暴力に、共通点ナシ。

サッカーと暴力に、共通点ナシ。

試合は、息子が所属するチーム「バウテン・ボーイズ」が、勝利をおさめました。試合終了後、選手たちは退場したと思いきや、フィールドに1人で残り、後片付けをしていたニウエンハウゼン氏のところに、3人の「ニュー・スローテン」所属の少年選手たちがやってきて、いきなり、ニウエンハウゼン氏に殴りかかり、袋叩きにしてしまいました。ニウエンハウゼン氏は、それでも、「フィールドの上では、けんかなどするものではない」と少年らを諭しつつ、抵抗することもなかったそうです。ニウエンハウゼン氏は、身動きできないほど殴られながらも起き上がり、1時間後に行なわれた最後の試合の審判を、責任を持って行い、自宅に戻りました。しかし、体調の不調を訴え、病院に担ぎ込まれ、翌日12月3日、脳挫傷でなくなりました。


オランダ・サッカー界の選手たちも、この事件の衝撃性に驚きを隠せませんでした。著名選手らは、ニウエンハウゼン氏への追悼の辞を述べ、チャンピオンズ・リーグでは、追悼のしるしとして全選手が黒帯を腕に巻いて試合を行なっています。
ニウエンハウゼン氏の命を奪った15歳と16歳の少年らは、蘭国籍を持つ移民出身者の子供たちで、オランダが長年抱え続けている、移民問題(オランダ人と移民との”不仲”)の一部を浮き彫りにした形となりました。


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