カナダ

カナダ:バンクーバー

西川 桂子(にしかわ けいこ)

職業…翻訳者、ライター、記者
居住都市…バンクーバー(カナダ)

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3階建て。151室の大きな施設です

3階建て。151室の大きな施設です

前回は、日本人、日系人向けの高齢者住宅・介護施設を紹介しましたが、この施設では基本的に、認知症があると、他の施設に移る必要があると、以前スタッフにインタビューしたときに聞きました。実際は、程度が重くない人は、日系ホームや新さくら荘に残ることができるようですが、介護度が高い人にも対応している施設の一つを今回は紹介します。

私がこの施設に出入りを始めたのは、以前にボランティアで話相手をさせていただいていたSさんが体調を崩し、これまで暮らしていた自立型の高齢者住宅での生活が無理になってからです。

建物の大きさなどの資料がないので、数字を挙げることはできませんが、3階建てで中程度の介護度の方の部屋が97室、介護度の高い方の部屋は54室です。各階に入所者が集まってイベントなどに参加できるラウンジや食堂、日当たりのよいパティオがあります。

部屋も広々としていたし、アクティビティも豊富なようだったので施設に対して好感を持った私でしたが、英語が得意ではなかったSさんにはあまり居心地はよくなかったようでした。「ラウンジで僕たちの年代の人向けの古い映画を見せてくれることもあるけど、英語が分からないので、僕は自分の部屋で日本語放送のテレビを見ています」。

一方、KさんとTさんの女性二人は、よくラウンジでのイベントに参加しています。「私たちも英語は分からんけど、部屋にいてても仕方がないし...」とKさん。KさんもTさんも部屋にはテレビがなかったり、あっても日本語放送が入っていません。


ミニコンサートなどアクティビティも行われるラウンジ

ミニコンサートなどアクティビティも行われるラウンジ

ただし、Sさんの一番の不満は食事でした。何度か食事を見ましたが、スープやパン、マッシュポテトという感じのカナダ式メニュー。確かに日本人にはつらいものがあります。「食事は見た目も不味そうだし、実際に不味いし、うんざりだよ」と、こぼしていました。

また、恐らく介護度の高い人が多いからでしょう。咀嚼(そしゃく)しやすいようにか、付け合わせの温野菜も「調理しすぎじゃないか?」という感じになっていました。「こんなくたっとした野菜を見ると、食欲もなくなるよ」とSさんは顔をしかめていました。

入所している人の中には、認知症の重い人から軽い人までさまざま。また、パーキンソン病のような難病の人もいらっしゃいます。介護度の違いで部屋やフロアを分けているわけでないようで、持参のタブレットで日本の歌を、軽度の認知症のKさんと歌っていると、「それは私のものよ、返して!」と、白人女性に怒鳴られたこともありました。この女性は若干認知症が進んでいるように感じました。


パーキンソン病で車椅子が必要な方の部屋。かなり広いです

パーキンソン病で車椅子が必要な方の部屋。かなり広いです

この施設は夫婦で入所している人もいますが、すべて一人部屋ということです。ベッドと中型のタンス、椅子、ベッドサイドテーブルがついています。

それ以外のテレビなどは各自が持ち込むそうで、持っていない人もいます。看護師が24時間常駐していますし、平日の9時から16時半の勤務のソーシャルワーカーなどがいるほか、小型バスも持っていて、プチ遠足にも連れていってくれます。日本人入所者を花見に案内したこともありました。

気になる費用については、税引き後の年金収入の8割が、施設での食費と家賃に充てられるということです。ただし、最低および最高額が設定されているそうです。年金額が実際にかかる費用を下回っている場合、政府からの補助で賄われています。


同じ方の部屋にあるトイレ。車椅子のまま使えるよう大きな部屋です

同じ方の部屋にあるトイレ。車椅子のまま使えるよう大きな部屋です



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