懐かしいシリア・オリジナルの味を商品化
2019.06.11 up
アルサイドさんが商品化した干しアプリコットのジャムの試作パッケージ
干しアプリコットは、中東ではよく好まれる甘味です。19世紀から20世紀にかけてシリアやレバノンから移民した人々の影響を受けて、中東を主としたアラブ料理の食材の一部がブラジルでは身近にあります。
その干しアプリコットを使用して故郷の味を思い出すジャムを自らのブランドとして販売し始めたのがサンパウロ暮らし4年目のシリア生まれのパレスチナ人、アブドゥル・サラム・アルサイドさん(53歳です)。ブランド名はファミリーネームの『アルサイド』です。
アプリコットのジャムは国産輸入品を問わず販売されていますが、干しアプリコットを使用したジャムは珍しく、口当たりは自然な甘さと香りであっさりと食べられます。干しアプリコットの自然の甘さが生かされているため、砂糖は通常のジャムのレシピの半分で調理されています。
アルサイドさんが作ったアラブ菓子
2011年に始まったシリア戦争以来、多くのシリア人が国内外で難民となるニュースが話題となりました。2014年から2016年頃をピークにシリア人が難民となって移動するニュースは少なくなりましたが、今も引き続き海外で生活することを余儀なくされたシリア人が世界各国に数百万人いるといわれます。ブラジルもそんな場所の一つです。
ブラジルには難民となったシリア人が約4000人暮らしているといわれ、同時に家族を呼び寄せたり子供が生まれる等で、近年は10000人近いシリア人難民が暮らしていると推定されています。そんな一人がアルサイドさんです。
アルサイドさんだけに限らず、難民となったシリア人たちは、異国のブラジルで創意工夫を凝らして生きていくしかありません。ブラジルは国情により様々な理由で危機的状況に遭っている人々を難民として受け入れるハードルは低いですが、それぞれの生活を政府や社会が組織的に面倒を見ることはありません。
アブドゥル・サラム・アルサイドさん
アルサイドさんのパレスチナ人の両親は1948年、イスラエル誕生の年にパレスチナの地を去り、シリアの首都ダマスカスに難民となって移り住み、アルサイドさんも同地で生まれ育ち国籍はシリアです。シリアでは造形芸術家として、彫刻、陶芸、タイルのデザイン、石膏パネルの装飾、そして家、オフィス、店舗の天井内張りの施工など多くの仕事を手掛け、軽食店を経営していたこともあり、良い生活を送っていました。それがシリア戦争で一転。仕事場のアトリエは爆撃を受けて破壊され、置いてあったものは盗まれ、レバノンを経て2015年にブラジルに渡ることになりました。
子供の頃から既にアラブの菓子を作って近所の子供たちに販売していたというアルサイドさん。アーティストだけに、様々なお菓子作りも盛り付けも既にプロフェッショナル。ブラジルに来てからは『デリシア・デ・サラムDelícias do Salam』というブランドでアラブ菓子の販売も手掛けて来ました。
アルサイドさんのザータール
お菓子だけでなく、既にアラブ人が「アルサイドさんのじゃなければ食べられない」と評判になり始めているものの一つが、様々なスパイスのブレンドのハーモニーが絶妙なザータールいというアラブ料理には欠かせないスパイスです。ブラジルでも販売されていますが、確かに大きく味が違います。かすかにレモン風味が効いていて柔らかな風味、洋風料理のふりかけになりそうな日本人の舌にも合う味わいです。
ブラジルのアラブ料理もやはりブラジルに適応した味になっているため、シリアから来た人にはアラブ料理と言っても物足りないと思うことも多々あります。そんな中でアルサイドさんの作るシリアオリジナルの料理は、アラブ人だけでなく、ブラジル人、そして日本人までも魅了する見事な味わいで、『アルサイド』ブランドの今後が楽しみになります。
●サラムさんのお菓子の注文はWhatsapp: 55(11)97019-5285まで
ザータールをぬったシリアパン
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