母校で行われた呂秀蓮元副総統の講演会
2019.06.12 up
準備段階の様子
台湾社会に数多くの優秀な人材を輩出している台北市立第一女子高級中學(以下、北一女)。社会の第一線で活躍する卒業生が、母校に戻り、後輩たちに自分の経験を語り継ぐことも多く見られます。
以前紹介した日本台湾交流協会の奨学金の試験の体験発表会もその一つですが、そのようなものからいろいろ受け継ぎ、卒業後に大きく羽ばたき、また後輩たちに返していく、という伝統のように思います。
3月15日午後、2000~2008年の陳水扁総統時代に副総統として職務を全うされた呂秀連(ルー・シューリエン)元副総統が母校へ戻り講演会を行いました。
講演会の様子
この講演会は、呂秀蓮元副総統の自叙伝の出版を記念し、出版元の周大觀文教基金會と北一女が共同で行ったもので、生徒、保護者、教員ら50人ほどが来場していました。
最初は、弦楽部の演奏でエレガントな雰囲気を引き出し、双方の代表者のあいさつを行い、全体で記念撮影を行ってから、呂副総統の講演が始まりました。
講演中の呂秀蓮元副総統
講演内容は、自身の生い立ちを振り返りながら、30代でがんの闘病生活を経験しただけでなく、政治の表舞台に立つ前に収監されたこと、副総統時代に遭遇した困難の話を中心に行い、さらに歴史観、国際政治で話題になっていることなど、幅広いネタで1時間10分あまり行われました。
生徒の質問に耳を傾ける呂秀蓮元副総統
講演終了後は、生徒からの質問に可能な限り答えました。
生徒たちは遠慮することなく、政治のこと、人生観のことなど踏み込んだ内容の質問をしていきました。それでも呂秀蓮元副総統は冷静に答え、10分以内の予定が20分近くまで対応していました。
質問した生徒の数は7人。
中には、台湾の政治に踏み込んだものもありましたが、印象に残っているのは、「崇拝している人やアイドルのような憧れのような存在がありますか」の回答。
要約すると、
「(原則として)皆さんには、そういうようなものはないことを望みます。そういった人たちのいいところや精神を見習うのは、決して悪いことではありません。ただ、アイドルとか、崇拝する存在なるものを作る必要はありません。アイドルというのは、一部は商業化されたもので、例えば「〇〇妹(注;日本の報道でいう『美しすぎる〇〇』など、女性を形容するときに使う表現の一つ)」といったものがありますが、政治の世界に政治アイドル、「〇〇妹」などというものは必要ありません。政治にはそれを行う者がいればいいのです」
ですが、私にはこの答えが大変新鮮に映り、長い間政治の世界に生きた「職人」の気概を感じずにいられませんでした。
最後に生徒たちのサインに応じる
最後は、参加者に用意された書籍のサイン会を行い、熱心な生徒の中には、この時に質問していた方もいました。
学校、主催者、私が心配していたのは、2020年の総統選挙を控え、メディアが殺到することでした。元副総統、与党の民進党と関係がある立場から、それ目当ての話を聞き出そうと考えているメディアが、場の雰囲気を壊すのではないか、と見ていましたが、蓋を開けてみたら、来ていたのは3社ほど。呂秀蓮元副総統が自身の生い立ちを語っていた前半の時点で全員帰っていて、大騒ぎすることはありませんでした。
実際、踏み込んだ面白い話が聞けたのは後半の方で、もしかしたらですが、呂秀蓮元副総統の方が察知して話の内容を変えていたのかな…と思いました。
講演会を見ていて、北一女が持つ歴史と伝統のすごさを感じたと同時に、このような経験が在学中にできる生徒たちが本当にうらやましく見えました。
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