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スイス:フリブール

小島 瑞生(こじま みずき)

職業…公務員
居住都市…フリブール(スイス)

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アイルランド政府と同国の公的医療サービス提供母体HSEによる、新型コロナ感染防止ポスター

アイルランド政府と同国の公的医療サービス提供母体HSEによる、新型コロナ感染防止ポスター

 世界中で、収まるどころか日々感染者が急増している状態となっている、新型コロナウィルス。

 欧州西部は英国の隣にある島国、アイルランドでも初めて感染患者が確認された2020年2月29日から、あっという間に新型コロナウィルスが全国に広がっていきました。

 2020年4月12日の時点で、アイルランド政府が発表している新型コロナウィルス感染者の数は9,655人、亡くなられた方は334人となっています。

 3月に入ってから状況は悪化し、学校閉鎖、そしてパブやホテルのバーなども営業停止となりました。さらに、アイルランドで一番大事な年間行事の一つである、3月17日の聖パトリックデーのパレードも、当然のことながら中止にしなければなりませんでした。


ウサギは、ヒヨコや卵などと同様、『豊穣』『新しい命』を表すイースター(復活祭)の象徴となっています

ウサギは、ヒヨコや卵などと同様、『豊穣』『新しい命』を表すイースター(復活祭)の象徴となっています

 その後、アイルランドのバラッカー首相は、3月28日より2週間後の4月12日までロックダウンを発令(その後5月5日までロックダウン期間を延長)。それは、公の場であろうと私的な場であろうと、単独世帯以外で複数で会うことは禁止というもの。『例外』を除いては、外出をしてはならない――といったような内容です。

 『例外』で外出しても良い時とは、例えば食材の買い物、介助など手助けが必要とする人を手伝うための外出、ちょっとした運動のための外出、そして『エッセンシャルワーカー』が自宅でテレワークをすることが難しい場合の通勤、といった場合などに限られます。
 この『エッセンシャルワーカー』に入る業種は、スーパーマーケットなどの食料品店や薬局、銀行、医療施設(病院など)、水道・電気などライフラインを扱う企業、ジャーナリスト含むメディア関連などで、これに属さない業務の場合、自宅待機か自宅勤務となるそう。

 もし上記のことを守らずに外をウロウロしていたら、パトロールする警察、そして全国1000ヶ所以上に設置されたチェックポイントで職務質問を受けることとなり、これに従わないと2,500ユーロ(約30万円)までの罰金、もっと厳しくなると、半年の懲役に科せられる可能性もあるようです。

 こういった話は、アイルランドの子どもたちにも理解ができているのでしょう。そのため、アイルランドの子どもたちが非常に心配したことがありました。それは「イースターバニーはイースターエッグを各家庭に運ぶ仕事だけど、働いていいの?」ということ。


アイルランドの子どもたちは、ロックダウンのルールを守りながらエッグハントを楽しめたのかな?

アイルランドの子どもたちは、ロックダウンのルールを守りながらエッグハントを楽しめたのかな?

 イースターバニーとは、イースター(復活祭)ではおなじみのウサギ。イースターは、イエス=キリストが死んで3日目に復活したのを祝う宗教的イベントですが、今年のイースターは4月12日でした。この日、子どもたちにとって一番大事なのはエッグハント(卵探し)。イースターの日の前夜、この伝説のイースターバニーがやってきて、良い子の家の庭などに、卵やウサギの形をしたチョコレートやお菓子を、こっそり隠していく…と言われています。

 実際、前日にお菓子やチョコレートを隠してまわるのは『イースターバニー=親など大人』であることがほとんどですが(笑)、子どもたちは「イースターバニーが来た!」と信じて、翌日に隠されたチョコレートやお菓子を、みんなで探すのをとても楽しみにしているのです。

 でも今年は事情が違います。新型コロナウィルスの影響で、エッセンシャルワーカーしか通勤や仕事で外出することができません。
 そこで、心配した多くの子どもたちが、実際に政府へ上記の質問(イースターバニーはイースターの日に勤務して良いのか)を送ったのだそうです。

 すると、アイルランドの厚生大臣が自身のツイッターで、公式にこう発表しました。

“子どもたちにたいせつなおしらせです。
きみたちの多くが、イースターバニーはイースターの週末にはたらいてもよいのかどうか、という質問をしてきたね。だから、えらいお医者さんたちにかくにんしました。”
“うれしいことに、イースターバニーはイースターにおしごとをしてもよいそうです。”
“でもイースターバニーも、しょっちゅう手をあらい、ほかの人とのきょりをじゅうぶんとるよう気をつけなさい、って言われていたけどね”

 アイルランドの子どもたちは、厚生大臣からのメッセージに「良かった!イースターバニーは働いても大丈夫なんだ!」ってほっとしたでしょうね。

 子どもたちの質問も可愛らしいですが、それに対し真摯に回答するアイルランド政府もスゴイな、と微笑ましく思いました。




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