公立病院の受付窓口
ブラジルにはSUS(統一保健医療システム/Sistema Unico de Saude、以下SUS)という医療制度があります。公的保険の一種といえますが、任意で、保険料は必要ありません。ブラジル国民やブラジル在住者なら外国人でも加入することができます。
サンパウロ市内の住宅街なら、たいてい居住地から徒歩で30分から1時間以内の所にポスト・デ・サウージ(診療所兼保健所のような所)や公立病院があり、それらの窓口で身分証明書や住所証明のための書類(電気代の支払い証明など)を提示すれば、その場でSUSに加入できます。
SUSに加入すると、公立病院やポスト・デ・サウージなどでの診療費、検査費、予防接種費、入院費などはすべて無料となります。家一軒を売って手術代がまかなえるというような心臓手術まで、SUSだと無料になってしまいます。また、痛み止めや栄養剤など、処方箋があれば一般的な軽い症状の薬剤なら無料で支給されます。
マンイ・パウリスターナに登録した産後の女性に配られる赤ちゃん用品
SUSを利用すると、妊娠期間から出産と産後の母子の検査も、全て無料で受けることができます。
特にサンパウロ市では2006年以降、マンイ・パウリスターナという健康プログラムと合わせて、母子に優しい保険制度の充実が計られています。
SUSに加入している妊婦なら、妊娠が分かるとマンイ・パウリスターナに登録することができます。
一貫してこの制度にのっとって出産まで迎えるなら、妊娠期間の診察、血液検査、超音波検査、出産する産院への見学会などが無料になるほか、診察や検査へ通うための交通費の入ったカード(最近は4回分)や、産後には赤ちゃんが使うための衣類やタオル、毛布などの入ったバッグが行政サービスで支給されます。
実際、SUSを利用してマタニティーライフを送ってみましたが、今の日本の感覚を持ち合わせていると、「ほんとうに無料(もちろん税金でまかなわれているわけですが)でこれだけのことをしてもらっていいの?」というのが率直な感想です。
SUSのカードとマンイ・パウリスターナに登録した妊婦に配られる交通カード
ブラジルには民間保険もいくつもあります。支払う保険料によって医療費が無料となる病院が特定されてきます。自らが加入している保険に合わない病院で受診する場合は、自己負担する必要があります。
例えば、とても応対のよい民間の婦人科のクリニックで超音波検査と診察を受ける場合、保険がないと、約3年前は一回で400レアル(約2万円)でした。今なら500レアルくらいに上がっていると思われます。ブラジルの一ヶ月の最低賃金を基準とすると、最低賃金の50%以上も一回の検査で費用が飛んでいくことになります。このようなクリニックは富裕層向けになります。
民間の医療機関と公的な医療機関の違いは何かということになると、その時々と場所により、一概にどちらがいいということはいえません。一ついえそうなことは、民間の方がサービスが良い(順番待ちが少ない、より最先端の医療機器がそろっていることがある、医師や看護婦さんの応対が丁寧、待合室や部屋が洗練されてコーヒーとお菓子が出るなど)ということです。
地方の公立病院の環境があまり良くないということが報道されることもあるようですが、サンパウロ市内の公的医療機関でマタニティーライフを送ることに関しては、特別に不備と感じる点はありませんでした。しいて言えば、民間の医療機関の医師は一対一の個人的な関係を大切にして丁寧にコミュニケーションをとってくれるのに対し、公的医療機関ではその場限り的な対応(事実特定の医師が妊婦をゼロから出産産後までみるという事はない)の医師に出会うこともありました。ただし、出産させていただいたアンパロ・マテルナルという産院の医師や助産婦さんはとても丁寧に応対していただけました。
医療の問題は世界中どこの国でも抱えているのではないかと思います。その社会に合わせたそれなりの制度が整えられていくのかなあという印象をサンパウロ市で受けるようになりました。
【サンパウロ市のマンイ・パウリスターナに関する参照サイト】
http://www.prefeitura.sp.gov.br/cidade/secretarias/saude/programas/index.php?p=5657
公立病院の超音波検査を受けるために窓口に並ぶ女性たち
ポスト・デ・サウージの婦人科の診察室の入口
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