ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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2日付けのサンパウロの有力紙で掲載されたカッサビ前市長からアダッジ新市長への交代式の話題

2日付けのサンパウロの有力紙で掲載されたカッサビ前市長からアダッジ新市長への交代式の話題

 ブラジルはクリスマスが日本のお正月のような雰囲気です。1日は祝日となりますが、一般庶民の仕事始めは2日からという人が少なくありません。


サンパウロ市内にあるレバノン移民の記念碑

サンパウロ市内にあるレバノン移民の記念碑

 2日のサンパウロの新聞の一面は、1日に行われた新しいサンパウロ市長就任式の模様が伝えられていました。カッサビ前市長からアダッジ新市長への交代式の話題です。
 パウリスターノ(サンパウロ出身の人)からパウリスターノへの市長のバトンタッチですが、ちょっと掘り下げると、レバノン人の息子市長からレバノン人の息子市長へのバトンタッチです。
 2006年に副市長から市長に昇格したジルベルト・カッサビ氏(1960年サンパウロ市生まれ、社会民主党(PSD))も、2013年から任期4年で市長となったフェルナンド・アダッジ氏(1963年サンパウロ市生まれ、労働党(PT))も、いずれも父親がレバノンからの移民です。アダッジ氏は母親もブラジル生まれのレバノン人です。
 この背景を踏まえて新聞の一面に掲載された新旧の市長の写真を見ていると、どうしてもサンパウロは「第二の」レバノン共和国のようにも思えてきます。カッサビ前市長もアダッジ氏も青少年期に同じ学校で学んでいるとのことです。
 レバノン本国の人口は約400万人、ブラジルのレバノン系コミュニティーの人口は約800万人と言われています。レバノンから海外に移り住み、ブラジルは世界第最大のレバノン系コミュニティーがある土地です。
 レバノンは小国で雇用のチャンスが少ないことや、政情の不安定さから過去には紛争がありました。祖国を離れたくなくても生きるためには新天地で新しい人生を作るという選択を余儀なくされた人も少なくありません。
 異国の地に根を張って生活してきたレバノン系コミュニティーの人々はブラジル全土で暮らしています。サンパウロ市には最も多くのレバノン人が集中し、レバノン人(アラブ人)特有の勤勉さや一族を大切にする精神を発揮し、同胞の結束が強そうに見えます。
 カッサビ前市長は前日の12月31日には、サンパウロの東洋人街の日系社会が開催する恒例の餅つき大会に来賓として出席していました。杵を持って、在サンパウロ日本国総領事と一緒にお餅つきも行っていました。おそらく、市長は餅つき大会に出席する義務はないと思いますが、文字通り、年末年始休みなく働くレバノン系ブラジル人の市長たちです。
 ブラジルでアラブ人と総称されるレバノン人やシリア人(大多数がキリスト教徒)はお金持ちというイメージが定着していますが、2世の息子市長たちの真面目で勤勉な働きぶりを見ていると、同じような父親の背中を見て育った結果なんだろうなあと感じさせられます。レバノン人の息子たちがサンパウロ市のトップに華々しく登場する姿は、レバノン系コミュニティーやレバノン本国の誇りとなっているに違いありません。 


12月31日のサンパウロの東洋人街の餅つき大会に参加するカッサビ前市長

12月31日のサンパウロの東洋人街の餅つき大会に参加するカッサビ前市長




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