6月13日のデモの翌朝、テレビに出演するアダッジ市長と、ポンジーニョとコーヒーを食べる女性
サンパウロ市では6月13日の夜、市内のメインストリートのパウリスタ大通りで、物価高騰に対する学生を中心とした大規模なデモが起こり、警察が出動して対抗措置が取られるという事態が発生しました。
デモが発生したからといって、最近では6月10日に値上がりしたサンパウロ市のメトロやバス料金の値段が下がることもなく、近頃では1ヵ月から2か月以内に数パーセントから数十パーセントは価格が上昇しているように見受けられ、食料品の値段も下がらない状況が続いています。(デモの効果で6月20日に以前の3レアルに値下がりしました)
13日のデモ以前も以降も、ブラジル各地の都市では大小様々なデモが続いていました。
12年前には1レアル程(約50円、当時のレートで約30円)で食べられたコーヒーとポンジーニョが、今では3レアル程(約150円)に
サンパウロ市に暮らす者から見ていると、あからさまな物価の上昇は3年ほど前から急激に加速してきたように思われます。2000年頃にBRICsと言われて以降、確実にインフレは進行していましたが、ここ数年の間で、不動産をはじめ、外食や家庭の基本的な食料品にまでインフレは忍び寄り、平均して12年前の3倍近くに価格は上昇しました。
例えば、サンパウロ市民の朝食に欠かせないポンジーニョと呼ばれるフランスパンの一個の値段は、12年前には一個10センターボ(今の為替で一個約5円、当時だと約4円)くらいでした。それが今では安い店では一個35センターボ(約17円)、高いパン屋では70センターボ(約35円)になりました。日本円で見ると大した価格ではなくても、ブラジル通貨の中だけで見ると、脅威的に感じる悪質な値上がり状況です。
パン屋さんでポンジーニョとコーヒー一杯を注文すると、12年前は安い店では1レアル(約50円、当時のレートで約30円)だったのが、今では3レアル(約150円)です。品質もサービスも何も向上していません。日本でなら、一個120円の菓子パンが急に400円に値上がりしたような感覚です。
デモ発生に直接起因したメトロやバスの料金は、12年前には片道1.45レアル程(約70円、当時のレートで約45円)でしたが、今では3.20レアル(約160円)に上昇しました。
ブラジルの国民食であるフェイジョン(豆)も、12年前には1キロ2レアル前後(約100円、当時のレートで約60円)で購入できたのが、季節にもよりますが、今では7レアル(約350円)くらいの事もあります。食肉も2倍以上値上がりしました。
12年前には片道1.45レアル(約70円、当時のレートで約45円)だったのが、2013年6月11日からは3.20レアル(約160円)に上昇したメトロやバス代
物価が上昇しても問題ないほど、市民の所得が上昇しているのかというと、必ずしもそうではないという事です。かつての低所得者層が、ここ数年で自家用車を乗り回せるようになるほど収入が良くなっているのは目に見えて明らかですが、その分、中・高所得者層の課税の負担は高まっているという事です。
総合的に見て、高所得者層から低所得者層に到るまで、基本的な生活物資の価格が上昇して得するブラジル人は誰もいないにもかかわらず、価格は独り歩きして上昇し続けています。このインフレで得をするのは、2000年より少し前にブラジルに着目した海外の投資家くらいに思うのは浅はかな見方でしょうか?
過去にもハイパーインフレがあったブラジルだけに、若者によるデモが発生したとはいえ、ある程度年配の市民はいたって冷静で「我々にはどうすることもできない」などと話し、いつもと変わらず、特に倹約すると言った雰囲気も見られず、ブラジル人特有の「ヴァイ・コン・デウス(神様のご加護がありますように)」といった雰囲気で淡々と生活をしています。値上がりしたポンジーニョを購入する人の姿も毎日見かけます。
たった12年前からサンパウロ市で暮らすようになっただけですが、個人的には物価の上昇率に驚かざるを得ません。
13日にデモが発生した時、サンパウロ市長やサンパウロ州知事は2020年の万博招致に向けてフランスのパリに滞在していました。万博どころではない、世界から見て不信感をぬぐえない市民生活に厳しい経済問題が目の前にあるサンパウロ市です。
6月14日の新聞の一面で報道されたいた6月13日夜のデモの様子
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