20年で人口が5倍になった先住民の集落
2014.05.27 up
グアラニ族の集落テノンデポランに建つ家屋
サンパウロ市の家庭でも、1世帯当たりの子どもの数が1人や2人、多くても3、4人というのが珍しくない時代です。
そのような中、サンパウロ市内の独立共同体ともいえる先住民グアラニ族の集落で、族長のヴェラニリさん(51歳)から、過去20年ほどで人口が約180人から1000人と5倍に増えたという話を聞きました。
グアラニ族の子ども
ブラジル各地には、先住民の子孫が、今も先祖からの文化を守って暮らし続けている地域があります。
サンパウロ市内には3つの代表的な先住民グアラニ族の集落があり、現在はグアラニ族の貴重な文化を保護することも重視され、行政の支援も入っています。
テノンデポランの族長ヴェラニリさんとその家族
集落の1つ、テノンデポランでの公用語はポルトガル語ではなく、先住民ゆかりのトゥピー語です。トゥピー語は、今日のブラジル・ポルトガル語になっているものも少なくありません。集落にはブラジルの国語であるポルトガル語が通じない人もいます。
集落のグアラニ族は、言葉だけでなく、生き方そのものも独自の伝統を大切にしている様子がうかがえます。例えば、農作物の栽培は利益を得るためにではなく、自分たちが食べる分だけ栽培するという、地産地消に通ずる精神です。
グアラニ族の手工芸品
サンパウロ市はW杯が開催されるくらいなので、日本と変わらない現代文明や経済活動で社会が回っています。その結果が、世帯数の子どもの数の減少にもつながっているのは既知の事実です。
グアラニ族が過去20年で人口が5倍に増えたのは、先進国と言われる現代社会とは一線を画し、暮らす土地の自然の恵みを享受して、家族や隣近所で必要な食料を自給自足して確保する、という生き方に起因していると考えられます。グアラニ族の基本の主食は、ブラジルでは簡単に育つマンジオカ(芋の一種)とトウモロコシです。集落の外で賃金を稼ぐ人もいますが、集落での生活はグアラニ族独自の生活スタイルが基本になっています。
集落内の住居は仲間と一緒に建てて、家賃は必要ありません。
そのような生活では、子どもは1世帯2、3人ということはなく、例えば、族長ヴェラニリさんにも10人の子供と孫、曾孫を合わせて50人の家族がいます。トゥピー語が話せる人が、新しく移り住んでくるケースもあります。
テノンデポランの人口が増えたため、今は、近隣に新たに2つのグアラニ族の集落も出現しています。
グアラニ族の少女と昔ながらの火起こしにかけた鍋
ブラジルでも日本でも、2世代前までは10人兄弟などは珍しいことではありませんでした。ここ半世紀で生き方ががらりと変わり、少子化という問題に突き当たっている日本です。
W杯も開催できる国際都市サンパウロ市にあって、古来からの生き方を守って生きるグアラニ族は、今も自然に子供が増えています。
現代社会からタイムスリップして、自然に回帰した共同体生活をするのは難しいかもしれませんが、グアラニ族には人間本来の豊かな生き方を垣間見る気がします。都市生活を営む現代人が忘れかけた何かが今も残り、学ぶべきことがあります。
レポーター「大浦 智子」の最近の記事
「ブラジル」の他の記事
- 2024年3月(4)
- 2024年2月(3)
- 2024年1月(3)
- 2023年12月(2)
- 2023年10月(2)
- 2023年8月(4)
- 2023年3月(2)
- 2022年8月(3)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(2)
- 2022年4月(5)
- 2022年3月(3)
- 2022年2月(6)
- 2021年12月(3)
- 2021年6月(3)
- 2021年5月(2)
- 2021年4月(2)
- 2021年3月(3)
- 2021年2月(1)
- 2021年1月(1)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(1)
- 2020年9月(3)
- 2020年8月(4)
- 2020年7月(3)
- 2020年6月(3)
- 2020年4月(5)
- 2020年3月(2)
- 2020年2月(2)
- 2020年1月(2)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(1)
- 2019年10月(1)
- 2019年9月(4)
- 2019年7月(3)
- 2019年6月(3)
- 2019年5月(1)
- 2019年4月(3)
- 2019年3月(1)
- 2019年2月(5)
- 2019年1月(4)
- 2018年11月(2)
- 2018年10月(3)
- 2018年9月(6)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(4)
- 2018年6月(6)
- 2018年5月(7)
- 2018年4月(6)
- 2018年3月(3)
- 2018年2月(4)
- 2018年1月(7)
- 2017年12月(5)
- 2017年11月(5)
- 2017年10月(2)
- 2017年9月(1)
- 2017年8月(3)
- 2017年7月(6)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年3月(1)
- 0000年0月(1)
- 2017年2月(1)
- 2017年1月(9)
- 2016年12月(2)
- 2016年11月(2)
- 2016年10月(4)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(1)
- 2016年6月(5)
- 2016年5月(2)
- 2016年4月(4)
- 2016年3月(2)
- 2016年2月(2)
- 2016年1月(3)
- 2015年12月(4)
- 2015年11月(1)
- 2015年10月(4)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(2)
- 2015年6月(3)
- 2015年5月(4)
- 2015年4月(6)
- 2015年3月(1)
- 2015年2月(5)
- 2015年1月(7)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(2)
- 2014年10月(7)
- 2014年9月(3)
- 2014年8月(8)
- 2014年7月(3)
- 2014年6月(3)
- 2014年5月(3)
- 2014年4月(3)
- 2014年3月(5)
- 2014年2月(3)
- 2014年1月(10)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(7)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(5)
- 2013年8月(7)
- 2013年7月(5)
- 2013年6月(6)
- 2013年5月(3)
- 2013年4月(9)
- 2013年3月(3)
- 2013年2月(8)
- 2013年1月(3)
- 2012年12月(9)
- 2012年11月(4)
- 2012年10月(6)
- 2012年9月(8)
- 2012年8月(7)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(4)
- 2012年5月(7)
- 2012年4月(3)
- 2012年3月(7)
- 2012年2月(5)
- 2012年1月(7)
- 2011年12月(9)
- 2011年11月(8)
- 2011年10月(6)
- 2011年9月(1)
- 2011年8月(1)
- 2011年7月(9)
- 2011年6月(10)
- 2011年5月(7)
- 2011年4月(8)
- 2011年3月(11)
- 2011年2月(10)
- 2011年1月(12)
- 2010年12月(14)
- 2010年11月(13)
- 2010年10月(9)
- 2010年9月(11)
- 2010年8月(10)
- 2010年7月(14)
- 2010年6月(12)
- 2010年5月(11)
- 2010年4月(10)
- 2010年3月(8)
- 2010年2月(6)
- 2010年1月(10)
- 2009年12月(7)
- 2009年11月(9)
- 2009年10月(7)
- 2009年9月(8)
- 2009年8月(8)
- 2009年7月(5)
- 2009年6月(7)
2 - Comments
かなやより:
2014 年 05 月 27 日 16:12:58
人口減少時代の日本で聞くと、20年で5倍というのは驚きの数字です。豊かさってなんだろうと、改めて考えさせられました。
oouraより:
2014 年 05 月 27 日 19:25:18
>かなやさま
旧宗主国ポルトガルの支配を経て国語がポルトガル語の今のブラジルになるまで、500年以上トゥピー語を絶やさず使って生活してきたことと言い、現代文明に一線を置いて生活し続ける自然な生き方と言い、本当の豊かさとは何か、民族や文化とは何か、改めて考えさせられると同時に、平和的で友好的でありながら強かなグアラニ族が輝いて見えました。
Add your comments