ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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ストで閉鎖されたサンパウロ市のメトロ・コンセイソン駅の入り口(6月8日)

ストで閉鎖されたサンパウロ市のメトロ・コンセイソン駅の入り口(6月8日)

 W杯ブラジル大会の開幕式が行われるサンパウロ市では、5日(木)に始まったメトロのストが9日(月)まで続いていました。

 先週から一部の路線は運行してきましたが、我が家の駅前も断続的にメトロがストップしていました。9日の夕方には運行路線も延び、10日(火)からはようやく通常に戻りました。

 毎年、メトロのストは発生してきましたが、たいてい半日から1日で終了していました。5日も続いたのは異例のことです。そして、5日も続けば、さすがに市民生活にも影響が出てきます。通勤・通学に困るのはもちろん、バスは人で混雑し、道路も自家用車で移動する人が増えて渋滞します。

 W杯の開幕式の日は、サンパウロ市は休日になります。W杯を控えたストによるプレ・休暇と思わなければやっていられない、というのが率直な市民の心情だと思います。

 このストは、単なる賃金の引き上げを訴えてのことではありません。ここ数年、食費や住居費、さらに交通費、医療費、教育費などにまで影響を及ぼしてきたインフレの問題が背景にあります。

 W杯を心から歓迎し難い、サンパウロ市の大多数の庶民生活の事情に起因しています。


メトロが不通の区間には臨時バスが増便。それでもいつも以上に混雑(6月7日、メトロ・コンセイソン駅)

メトロが不通の区間には臨時バスが増便。それでもいつも以上に混雑(6月7日、メトロ・コンセイソン駅)

 個人的な生活目線でのことになりますが、サンパウロ市で暮らし始めた14年前に比べて、食費、住居費の値上がりは目に見えて明らかです。

 外食費は、ほぼ3倍に値上がりしました。
 もし、サンパウロ市で日本円で生活する人の場合、日本円も弱くなって、100円の価値だったものが300円近くまで上がったような状態です。つまり、分かりやすく言えば、ついこの前は350円くらいで食べられた料理が、1500円くらいになったというような感覚です。品質は向上していません。それどころか、量が少なくなったりした商品もあります。

 日本円の為替を含めると、多少オーバーになりますが、ブラジル通貨のレアルだけを見て食費や住居費を14年前と比較しても、一般に最低でも2倍以上値上がりしています。

 サラリーマンの給料も2倍以上、値上がりしているのかといえば、全てがそうでもないということのようです。ブラジル社会の底辺を支えてきた多くの低所得者層の最低給料が月500レアルくらいだったのが、1000レアル(約4万6000円)くらいに上がったということです。

 もともと安過ぎた最低賃金を倍にして、インフレになってしまえば、賃金が値上がりしても意味がありません。

 給料が3000レアル(約13万6000円)以上だった中流サラリーマンの給料はそれほど上がっていないとすれば、その人たちもインフレとともに生活費はかさむばかりです。

 基本的な食料品や日用雑貨も値上がりしており、お腹いっぱい食べられないという人が出てきても当然です。以前はフェイラ(朝市)の試食がたくさん出されていましたが、最近はご自由に、どうぞと言った感じの試食も少なくなりました。

 お腹が満たされなければ攻撃的にもなり、治安の悪化にもつながります。


インフレの中でも商売繁盛しているシュラスコ・グレーゴ

インフレの中でも商売繁盛しているシュラスコ・グレーゴ

 以前は1個1レアル(約47円)で食べられたシュラスコ・グレーゴ(小さなフランスパンに、焼いて細切れにした焼き肉を挟んだサンドイッチ)もたいてい3レアル(約136円)になりました。それでも、新しくオープンした近所のお店では男性客を中心に飛ぶように売れています。

 一般庶民にとっては、普通の安いバールの定食でも最低12レアル(546円)、マクドナルドのハンバーガーでも6レアル(約270円)、少しおしゃれなレストランのランチなら70レアル(3200円)くらい必要と考えると、3倍に値上がりしても、焼きたての肉を挟んだシュラスコ・グレーゴは、他のランチや軽食に比べると、安くて食べた感じを味わえる、不況に強い商売と言えそうです。

 店頭に溢れるブラジル国旗。路上や壁に描かれ始めたブラジル国旗。ブラジルを大切に思う風景はあちらこちらで見られても、市民の現実生活への不満は募るばかりです。


W杯に向けて道路にブラジル国旗を描く様子

W杯に向けて道路にブラジル国旗を描く様子


サンパウロ市の行く末を見守るブラジルカラーの服を着たペットショップの猫

サンパウロ市の行く末を見守るブラジルカラーの服を着たペットショップの猫


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  • 510 ビュー
  • 2 コメント

2 - Comments

かなやより:

2014 年 06 月 11 日 16:06:11

W杯とスト…。ブラジル社会の複雑な事情は、日本でもよく報道されています。今は、W杯が平穏無事に進んでくれることを祈るばかりです。

oouraより:

2014 年 06 月 11 日 18:47:05

〉かなやさま
 とりあえずずいぶん前から決まったことではあり、W杯だけは無事に過ぎてほしいものです。でも現状の問題も解決策を打ちだしていかなければならないと思います。

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