台湾の高校バスケHBL 残り1分で起きた喜劇と悲劇
2015.05.22 up
男子決勝戦の様子
前回も少し紹介しましたが、高校バスケHBL男子の決勝・台北市立松山高級中學(以下、松山高中)と新北市立泰山高級中學(以下、泰山高中)は、大変盛り上がったのですが、これ以上ないというくらいの驚く結末でした。
泰山高中は、前年は2次予選の敗者復活戦で敗退し8強に残れなかったため、今年は予備予選からスタート。予備予選からは、決勝前日までの20試合で全勝。また、連勝中の試合展開でも相手につけ入る隙を見せることなく、ほぼ完勝に近い形で決勝に上がり、チーム全体にも「(オレたちが)絶対優勝する!」という強い自信と雰囲気も漂っていました。
一方の松山高中は、3連覇を達成した2011年以来の決勝戦。3連覇の反動は大きく、そこからチームを建て直すまでに時間はかかりましたが、前年まで悔し涙を流した2、3年の選手たちが力をつけ、チームの総合力が上がったことが決勝進出最大の要因になりました。
左は弟の高國豪(ガオ・グオハオ、1年、松山高中)、右は兄の高國強(ガオ・グオチャン、3年、泰山高中)
そして決勝戦の注目は、上の写真の高國強、高國豪のシューター兄弟対決。ハーフタイムでは、カメラマンからの要望もあり、上のように2ショット写真が実現しましたが、この約1時間後に両者の明暗がはっきりする展開になるとは、私だけではなく会場にいる誰もが予想していませんでした。
試合は、序盤は泰山高中のペースで進み第2Q終了時点で46-31と泰山高中がリード。松山高中は主力の2選手が3ファールになったことで、戦術に制限が出てくる恐れがあることから、泰山高中が有利な状況であると思えるほどでした。
第3Qでは、3ファールの主力2選手がファールを蓄積することなく最後までプレーし続け、着実に得点を重ねた松山高中に対し、泰山高中の主力2選手が短時間で4ファールになり、ベンチに下げざるを得ない展開に陥ったことで、少しずつ影響が出始めます。泰山高中は、予備予選から前日の準決勝まで、前出の高國強をはじめ他の選手もおもしろいように3ポイントシュートが入っていたのですが、それがだんだん入らなくなり、更には、至近距離のシュートもフリースローも同様に入らなくなり、第3Q終了時点で61ー56まで追い上げられました。
残り10秒でリードを保ち、盛り上がる松山高中のベンチ
第4Qでは、松山高中が15点差を5点差まで詰めたことで、さらに勢いづいていきました。
泰山高中は、4ファールの主力2選手を出場させ、相手に傾きかけた流れを止めようとしますが、流れを止めるどころか、1人がファールアウトになったことで、更に劣勢に立たされました。
迎えた歓喜の瞬間
松山高中は、前出の高國豪が第4Qだけで3ポイントシュートを3本入れる活躍で逆転への手応えを掴み、残り1:38では高國豪の中距離のシュートが決まり72ー72の同点。そして、残り55.59秒で松山高中は74-72と逆転しました。
残り1分で逆転負けを喫し、ベンチでうなだれる選手たち
逆転後、泰山高中も喰らいつきましたが、主力選手のファールの蓄積ですぐにファールプレーに持ち込めなかった影響が出たのか、最後は73-79で敗れました。
歓喜の松山高中の選手たちの傍らで、泰山高中の選手たちは悔し涙に暮れました。少しずつ追い込まれていたといえ、逆転を許す最後の1分まで20連勝のチームにふさわしい戦いを見せていただけに、ほぼ掴みかけていた優勝が手元からするりと逃げた格好になり、ショックが大きい選手たちの様子を見ていたコーチや関係者たちは、応援席へのあいさつを促す程度の必要最小限の言葉をかけるのが精一杯でした。
注目された高國強、高國豪兄弟も試合後明暗がはっきり別れ、上の写真でタオルを頭から被って号泣の兄(手前側の選手)に対し、弟は試合の要所でシュートを決めただけでなく、23得点、7アシストと活躍したことで新人王とMVPを同時受賞し、表彰式では笑顔全開でした。
日本では「甲子園には魔物が棲んでいる」という言葉をよく耳にしますが、台湾では「台北アリーナには魔物が棲んでいる」という感じのHBLでした。
*男子決勝戦の様子
https://www.youtube.com/watch?v=SxQ57dJnihU
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