外国人差別や偏見に挑む「第5回難民ワールドカップ」
2018.11.26 up
第5回難民ワールドカップで優勝した各国難民からの選抜チーム「マライカ」
外国人差別や偏見をなくすことを目的に、2014年、Wカップ・リオ大会の年に、サッカー王国ブラジルらしくサンパウロのNGOア・アフリカ・ド・コラソンによって開始された「難民ワールドカップ」。第5回目となる同大会が、11月18日、20日にサンパウロ市内のパカエンブースタジアムで開催されました。
今年5月、8月、9月に、世界各国からの難民が比較的集住するポルトアレグレ市(リオグランデドスル州)、リオデジャネイロ市、サンパウロ市で地方大会が開催され、それぞれの大会で優勝した3チーム(レバノン、アンゴラ、ニジェール)と国境を越えて編成された特別の難民チーム・マライカの4チームが準決勝と決勝に臨みました。
結果は各国難民から選手を選抜したマライカが1対1で引き分けの後、PK戦で優勝しました。
決勝戦に向かうリオ市から出場したアンゴラチーム
ポルトガル人によるブラジル発見(1500)以降、ポルトガルをはじめとして、19世紀からは世界各国からの移民が到着して国を発展させてきたブラジル。近年も移民は存在していますが、一般的には移民の子孫の時代になり、かつてほどの存在感は薄れています。
その様な中、呼び方が違うだけで、現代の移民と言えるのが難民です。かつてブラジルに渡ってきた移民も、出身地での戦争や迫害、経済状況の悪化など、現代の難民と同じ様な状況から逃れてやってきた人も珍しくありませんでした。
そういった意味では、比較的難民に対して扉を開いているブラジル。国家難民委員会(CONARE)によると2017年のブラジルでの難民申請者は33865人、認定者数は10145人と、受け入れ数も決して少なくはありません。
しかし、問題はブラジルで暮らし始めてからです。
「ブラジルは扉は開いているが、中に入ると窓が閉まっている」
と、NGOアフリカ・ド・コラソンの副代表で難民ワールドカップのコーディネーターであるアブドゥルバセット・ジャロールさんは言います。
マライカ対アンゴラの決勝戦
国連によると、難民の定義は、「政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々」です。
出身国で大変な境遇にあった人々が、新しい国で偏見に遭うというのは皮肉なことですが、他にも良い雇用がないと言った問題等、ブラジルではブラジル人でも良い職を得るのが大変であることを思うと、難民にも決して生きやすい状況ではありません。
それでもたくましくブラジルで人生を切り開こうとする難民や移民がいます。ごく普通の人々が出身国から生き延びるために海外で難民となり真面目に生きているという事を、ブラジルの人々が知るためにも、難民たちが勇気づけられるためにも意義深い難民ワールドカップとなっています。
国連難民高等弁務官、サンパウロ市ほか、民間企業がスポンサーとなって同イベントを後援し、表彰式にはサンパウロのブルーノ・クバス市長も訪れ祝辞を述べました。
クバス市長は、世界では人種差別が多い中、サンパウロではこのようなイベントができる歴史的な土壌があるということについてコメントし、人権問題を解決するために貢献するNGOアフリカ・ド・コラソンに感謝状を手渡しました。
ブルーノ・クバス市長から感謝場を受け取るNGOアフリカ・ド・コラソンの会長ジャン・カトゥンバさん
閉会式であいさつするサンパウロのブルーノ・クバス市長
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