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台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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2月18日の試合より

2月18日の試合より

 過去、何度も台北市立第一女子高級中學(以下、北一女)の試合の様子を紹介してきました。2017年の予選敗退から立ち直り、2019年から4年続けて決勝トーナメントに進出するまでになりましたが、その間2度決勝に進出する奮闘ぶりを見せました。

 北一女の戦い方は、特定の選手に依存せず、ベンチ入りしている選手全員をこまめに入れ替えながら戦うチームワーク重視型が最大の特徴で、どのような状況でも最後の0秒になるまでしぶとく相手に喰らいついていくところです。それ故かは分かりませんが、人の心を打つようなシーンも多く見られ、またそれが高い人気を呼んでいるようです。

 今年もそれを象徴するようなシーンが出てきましたので紹介します。


3月12日の準決勝より

3月12日の準決勝より

 まずは、2月18日の準決勝リーグ戦。

 対戦相手の台南市立永仁高級中學(以下、永仁高中)は、5年連続で決勝チーナメントに進出している強豪で、優勝候補の一つでもありました。この日の試合は序盤から10点以上の差をつけられる厳しい展開になりました。

 第3クウォーターに入ってから少しずつ点差を縮めることができたものの、あと一歩のところがなかなか詰まらない展開になりました。

 この試合が大きく動くきっかけになったのは、ある主力選手のミス。
 TV中継では分かりにくいのですが、自分の近くに来るボールに注意を払っておらず、相手に反撃の隙を与えかねない状況を作ってしまい、味方の選手が慌ててファウルで止めるということが起きました。
 その後、当該選手はすぐに交代となり、ベンチに下がりましたが、一番端に座り、頭からタオルを被り、ずっと涙をぬぐう姿がありました。

 その交代の後、危機感が芽生えたのか選手たちの表情が一変しました。
 先発出場の主力選手だけでなく、ベンチスタートの選手にもいい意味での緊張感が生まれ、それがプレーにも反映され、一気に逆転し、77ー66で勝利。

 前出のミスで交代した選手は、試合終了まで出場機会がなく、ベンチに座ったままでしたが、試合終了後に応援席に感謝の一礼をしてから、駱燕萍ヘッドコーチ(以下、HC)の顔を見てまた涙を見せていました。
 
 交代は、前の試合まで4連勝で浮つき気味のチームを引き締めるために行なったものだと思うのですが、チームを引き締めるだけでなく、団結力を更に高めるきっかけになった試合にもなりました。

 北一女は、準決勝リーグを6勝1敗の1位で終え、決勝トーナメントに臨みました。


準決勝の試合終了時の様子

準決勝の試合終了時の様子

 決勝トーナメントの初戦は、2月18日の試合で対戦した永仁高中。

 決して楽な相手ではないのですが、序盤から点差をつけ、優位に試合を進め、最終的に83ー61で勝利し、決勝に上がりました。

 この試合、最後の1分にチームを象徴するシーンがありました。

 


決勝戦に臨む前に集中を図る選手たち

決勝戦に臨む前に集中を図る選手たち

 3枚目の写真の背番号4の陳品諾という選手が、最後の1分を切ったところで出場しました。彼女は、3年生になって初めてベンチ入りを果たしましたが、両膝の故障の影響でベンチにいる時間が多く、記録係をしていることが多かった選手です。

 その選手が、記録上40秒の出場時間で3ポイントシュートを2本入れる頑張りを見せました。点差が大きくあったことに加え、他の選手もフリーでシュートが打てるようお膳立てしていたこともありますが、チーム一丸で出場機会に恵まれていない選手のためにプレーする姿は、チームスポーツと学生スポーツの魅力を一気に見せてくれたような気がしました。

 試合終了後、選手たちは一斉に陳品諾に駆け寄り、彼女の奮闘を称える姿がありました。

【参考】
https://youtu.be/a7buiNENtMY?t=173


決勝であと一歩のところで敗れ、大泣きする選手たち

決勝であと一歩のところで敗れ、大泣きする選手たち

 決勝は前半で10点差以上の差をつけられても、後半で4度同点にする奮闘を見せましたが、最後の1分でも4点差が詰まらず、87ー79で敗れました。

 敗れた後は、上の写真のように全員大泣きでしたが、記者会見でらしさが出ました。駱燕萍HCと選手全員が手を繋いだ状態で会場に入り、質問に対応する際も、会場を後にする際も手をつないだままでした。

 会見の時間は男子決勝が始まっている頃で、私はその場におらず、後で知り驚きました。おそらくですが、駱燕萍HCは「決勝まで特定の選手(2枚目の写真でシュートを打っている宋瑞蓁がメディアの注目を集めました)の力で勝ってきたわけでななく、チーム全員の力で勝ってきた」というのを伝えたかったのに加え、選手たちに「勝つために何が足りなかったのか」を手をつながせることで教えたかったのではないかと見ています。

 北一女は10年ぶりの優勝を逃しましたが、学生スポーツ、チームスポーツが持つ魅力を最大限に伝え、悔し涙とともに台北アリーナを去っていったように見えました。


【参考】
https://www.facebook.com/watch/?ref=search&v=1008789416661700&external_log_id=688fdcee-5077-4f9b-9a1d-49af184cfc80&q=hbl%20北一


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