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スイス:フリブール

小島 瑞生(こじま みずき)

職業…公務員
居住都市…フリブール(スイス)

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バーデン・バーデンの町。日中は暑すぎて観光客の姿もまばら

バーデン・バーデンの町。日中は暑すぎて観光客の姿もまばら

 世間が夏休み真っ最中だった8月半ば、ドイツ南部の黒い森地方にあるバーデン・バーデン(BadenーBaden)という町に数日滞在しました。

 ドイツ語で『風呂』『温泉』を意味するこの町は、その名の通り温泉があります。ちなみにバーデン・バーデンの温泉には塩化ナトリウムが含まれており、ちょっぴり塩味がします。

 18世紀から19世紀にかけて観光地として整備され、欧州各地から王族・貴族、文化人が静養に来たそうで、著名な音楽家やオーストリア皇妃エリザベートもバーデン・バーデンを訪れたのだとか。


宿泊した『ブラームス』の部屋。中央が若かりし日のブラームスの肖像

宿泊した『ブラームス』の部屋。中央が若かりし日のブラームスの肖像

 筆者の場合、温泉というより町歩きや買い物に興味があったのですが、なんせ暑いこと!

 滞在中は気温が連日33、34℃ぐらいあり、そのため通りには観光客の姿があまりなく、みんな夕方になって少し暑さがやわらいだ頃に街へ繰り出していたようでした。


『ブラームスハウス(Brahmshaus)』の看板

『ブラームスハウス(Brahmshaus)』の看板

 そんなわけで日中はホテルに避難していたのですが、滞在していたホテルはユニークで、モーツァルトやシューベルトなど音楽家の名前がついている部屋がありました。

 筆者の泊まっていた部屋は『ブラームス』。ブラームス(Johannes Brahms)はドイツ・ハンブルク出身で、ロマン派の音楽家だった人。≪ハンガリー舞曲≫や≪ブラームスの子守歌≫などが有名です。

 ブラームスがテーマの部屋なだけあり、部屋内の壁にはブラームスの肖像画や直筆楽譜を複写したものなどがありましたが、肖像画は20代の頃のもので、全くイメージが違って見え、最初ブラームスだと分かりませんでした。
 
 一般的に知られたブラームスの肖像画といえば、学校の音楽室にあったような、ひげをたくわえた恰幅の良い、険しい表情の中年男性ですものね。

 ところでブラームスはバーデン・バーデンと深い関わりがあります。

 ブラームスは当時オーストリアのウィーンで売れっ子でしたが、1865年から1874年の夏はいつもバーデン・バーデンで過ごしていました。


道路から見上げる形で、ブラームスハウスを見ることができます

道路から見上げる形で、ブラームスハウスを見ることができます

 その理由はある女性の存在にあります――それはクララ・シューマン(Clara Schumann)。

 ≪トロイメライ≫などで有名なロベルト・シューマン(Robert Schumann)の妻で、クララ自身も人気ピアニストでした。

 ブラームスはシューマン夫妻と懇意にしていましたが、ロベルト・シューマンは精神を病んで療養所に入院、その2年後に病死してしまいます。

 ブラームスはロベルト・シューマンの入院中も面会できていましたが、クララは夫との面会が許されず、亡くなる直前にやっと顔を見ることができたのだそう。

 夫の死後6年経った後、クララ・シューマンはバーデン・バーデンに家を買い、子どもたちと一緒に引っ越します。そして1863年から1873年までの10年間をそこで過ごしました。


ホテルの部屋に飾られていた、ブラームスハウスからの眺望を描いた絵画

ホテルの部屋に飾られていた、ブラームスハウスからの眺望を描いた絵画

 バーデン・バーデンで、二人はコンサート等を一緒に開催したりしていたそうですが、ブラームスの一途に想うクララへの気持ちは、普通の“友情”や“親友”の域を超えていると考える人が多いようです。

 現在も残る「ブラームスハウス」は現在リノベーションのため閉館中ですが、家の外観は見ることができます。

 野外コンサートなど様々な音楽・文化イベントが開催され、観光客に人気のこの町ですが、人々を惹きつける魅力は昔から変わらないようです。


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