闘牛というと、スペインのそれを思い浮かべる方が多いと思います。物見高い観光客や、本国の熱狂的ファンを魅了する国技、それがスペインの闘牛です。あまり知られていないかもしれませんが、隣国ポルトガルでも闘牛は行なわれています。
大中規模都市内にあるポルトガルの闘牛場。闘牛場以外にも、アパートとしての住宅の役目も。
ポルトガルの闘牛はスペインのそれと異なる点があります。
一種のセレモニー化されたポルトガル式の闘牛は、歌劇のごとく第1幕から第3幕で構成されており、第2幕で登場するフォルサドと呼ばれる闘牛士集団は実にユニークな存在です。彼らは8人でまとまって出場し、怒り狂う雄牛に素手で勇敢に立ち向かい、一挙に雄牛に飛びかかって押さえ込むのです。その様は勇敢かつコミカルでもあり、観客を沸かせる大きな要因となっています。
また第3幕で、闘いを終えた雄牛が、闘牛場に放たれた仲間の牛たちと一緒になっておとなしく退場する様子は、さっきまでの白熱を忘れさせる平和な光景でもあります。
ポルトガル国内には、現在10の闘牛場があります。興行は、春の復活祭のあたりから始まり、10月ごろまで続きます。主な観客層は、地元の闘牛ファンたちですが、夏になると観光客も観覧席の隅に陣取って興味深く観戦しています。観戦料は40ユーロ(日本円で約5500円)ほど出せばアリーナ席が確保でき、至近距離から、闘牛士や雄牛の様子をつぶさに見られます。
フォルサドと呼ばれる、素手で牛に立ち向かう闘牛士たち。
ギラギラ輝く太陽の下、現地人らに混ざり、Olés!(オーレ!)と声がかれるまでかけ声をかければ、ポルトガルならではの闘牛の醍醐味を堪能できること請け合いです。闘牛場がある地域に住む地元民たちにとって、闘牛は娯楽であるとともに、重要な観光収入源。著名な闘牛士が出場して観客を多数動員すれば、地元の財政難も少しは解消できるだろう、という日和見的な考えが、地元政治家たちの中にも根強くあるほどです。
しかし、過去10年ほどの間、国内外の動物愛護団体の活動が活発化し、闘牛は矢面に立たされ続けています。公衆の面前で牛を殺さないという、いわば「専売特許」をもってしても、動物に苦痛を与えて「金儲け」をするのは野蛮、という意見がまかり通っているためです。
闘牛を廃止する案は現在存在しないものの、政治家の中には、「闘牛のような残酷なイベントは、近代のポルトガルには不必要である」と述べ、近い将来、廃止を検討する意向を示す人も増えてきました。
闘牛廃止か継続か?で、国会をも揺るがす動物愛護団体員と闘牛士との「熱き闘い」が、現在も繰り広げられているポルトガルですが、インバウンドにも威力を発揮する闘牛に軍配が上がるのか、神が創りし命あるものを守護する「闘牛反対派」が勝利を収めるのか、それは、誰にもわかりません。
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