バスクの妖怪ラミア
2009.08.13 up
足に注目
バスク地方に住むという妖怪を紹介します。
名前はラミア(Lamia)。神話にも登場するようですが、Lamiasと複数形にするときはバスク語ではlamiakと「k」が使われています。山の中にある川に住み、足先まで届く長い金髪を金の櫛でときながら美しい声で歌を歌い、バスクの羊飼いたちを誘惑します。山、川、水と自然の豊かなスペイン北部のバスク地方ならではのお話です。
ある日バスクの羊飼いアンチョンは、森で美しい歌声を聞きました。あまりの美しさに羊のことも忘れて歌声に導かれて行くと川岸に出ました。そこで目にしたのは川の真ん中の岩の上にすわっている美しい娘でした。金色の髪の毛は長く長く垂れ、足下まで届いていました。アンチョンを見ておどろいたその娘はすぐ水の中に飛び込み、頭だけだして彼の方を見ていました。
家へ帰っても娘の美しさや歌声が忘られなかったアンチョンはまた川へ戻り、最後には結婚の約束をします。家で、自分の母親に結婚のことを話しますが、結婚相手の娘のことを「美しい、美しい」と言うばかりで詳しくは何も知りません。怪しく思った母親は村の長老と話をしました。長老は、もしそれがラミアなら、足は人間のものではないはずだから確認するように、と言いました。
娘の足を確認するように母親に懇願されたアンチョンはまた川へ向かいました。そこで水浴びする美しい娘の姿を見てまたうっとりしましたが、目を足の方に移すと、なんと驚いたことに、それは人間の足ではなく鳥の足だったのです。娘はラミアだったのです。
その後、アンチョンは高熱が出て寝込みます。夢には何度もラミアがでてきて、「おいで、おいで」と彼を呼びましたが、彼は二度と彼女のところへは戻りませんでした。というのも、彼はそのまま死んでしまったからなのです。その後、アンチョンの葬儀に来たラミアは、教会に入れてもらうことは当然できませんでした。泣きながら山へ帰ったラミアの涙は、また山の新しい泉となりました。
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