それぞれの人、信仰、新年の誓い
2012.12.14 up
サンパウロ市郊外のカトリック教会の一つでのミサ。ステンドグラスにはブラジルの保護者であるアパレシーダが描かれている。
ブラジルはポルトガル人カブラルが発見したとされる1500年から、キリスト教のカトリックが主流とされる時代が長く続きました。19世紀になると、ブラジル全土であらゆる宗教の信仰の自由が認められ、今日では数千年の伝統ある宗教から、近年生まれた世界各国に由来する新興宗教まで、数えられないほどの宗教とそれを信仰する人々が共存しています。
新年の誓いといえば、最もブラジルらしい趣のある習慣は、海岸地方でイエマンジャと呼ばれる海の女神の人形を、小さな船に流して一年の無事を祈願することです。アフリカの宗教に由来するといわれ、今日ではブラジル文化を代表する新年の儀式です。
1月6日がクリスマスと定められている、サンパウロのアルメニア正教会で、ミサの後にご聖体の種無しパンを授ける様子。
人口約1億8000万人というブラジルの人々の宗教は様々です。今も大多数がカトリック(日本の仏教や神道のような感覚)ですが、特にサンパウロ市のような大都市には、世界各国から移民した先祖を持ち、様々な国籍や宗教を持つ人が暮らしています。それに合わせた各教会や民族コミュニティーがたくさんあります。
隣人とは異なる各教会や各コミュニティーに属する人は、それぞれの人がどこで何をしようとほとんど興味もなければ、実態を知る機会もほとんどありません。サンパウロは間違いなく世界の人が共存し、グローバル社会の先端を行っていますが、多民族、多宗教の集団は、短期間で融合するものでもないという考えも周知の通りで、ブラジルは「モザイク国家」とも言われます。
それを象徴するかのように、新年の初めには大晦日の徹夜明けで寝正月のブラジル人も多いですが、信心深い人は、カトリック教徒なら所属する教会へ、ウンバンダというブラジルの宗教を信仰するなら所属する礼拝堂へ、と新年の祈りに向かいます。
ウンバンダの礼拝堂での祈りの様子
サンパウロの少数派の中には、例えばアルメニア正教を信仰するアルメニア系の人や中華系の人もいます。アルメニア正教では西洋の旧暦であるユリウス暦で1月6日がクリスマスであり、サンパウロ市内にあるアルメニア正教会でも今もその日がクリスマスで、新年のミサを上げるような雰囲気があります。中華系の人の正月は旧正月のお祭りが東洋人街で開催されます。
日本人移民の子孫が約150万人暮らすといわれるブラジルで、最も日本人、日系人が密集するサンパウロの東洋人街では、毎年12月31日に行われる餅つき大会の隣で、茅の輪をくぐった後に神棚に新年の祈願を行う行列ができます。昨今では多くのブラジル人が行列に加わっています。
サンパウロでは、本当にさまざまな人が、さまざまな言語、信仰、習慣を通じて新年の誓いを立てているように見えます。
サンパウロの東洋人街で神道式に新年の祈願をする人
サンパウロ市内にある自由メソジスト教団(プロテスタント系)の日本語部での礼拝の様子
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