世界でも唯一のヤシの木と混植して栽培されるお茶園
2024.03.27 up
アグロフォレストリーによって栽培されるお茶とヤシの木
サンパウロ州のレジストロ市には、現在、世界でも唯一といわれるアグロフォレストリー(森林農法)によって栽培されるお茶園「山丸農園」があります。
その珍しさと環境に優しいお茶園ということで、国内外からも観光客が見学に来ます。
アグロフォレストリーは、一つの土地に樹木と農作物を一緒に植え、植物同士や生態系の相互作用によって、農業と林業・畜産業を同時に行う農法のことです。ブラジルでは、日本人が移住したブラジル北部パラー州のトメアス移住地などで、大規模なアグロフォレストリーによる成功事例がよく紹介されています。
アグロフォレストリーによって栽培されるお茶とヤシの木を模型で説明する農園関係者
ESGビジネスの追い風も受けて、現在はブラジル各地の農場でアグロフォレストリーによる農業が実施されています。
山丸農園は現在は観光農園としても取り組み、レジストロのお茶園の歴史を紹介し、自農園で生産されたお茶とジュサラと呼ばれる種類のヤシを使った飲料、お菓子などを作って来客をもてなしています。
レジストロ市は、1950年代から1990年頃までに入植した日本人がお茶栽培で栄えた町です。山丸農園の創設者は1953年に同地に8ヘクタールの土地を入手してお茶栽培を行っていましたが、1990年代に国際情勢により輸出に依存していた同地でのお茶栽培は一挙に衰退しました。その後、あまり手入れしていなかった土地のお茶の木の合間には自然にヤシの木などが生い茂っていたのを受けて、2011年にアグロフォレストリーによるお茶栽培を本格化し、2017年には日本で製茶技術を学び、自園のお茶を生産販売するようになりました。
左からヤシ(ジュサラ)の実のジュース、ほうじ茶、紅茶
お茶はオーガニックで紅茶と緑茶とほうじ茶がメインです。
アグロフォレストリーによるお茶の利点の一つは、例えば抹茶の生産です。抹茶のための茶葉は日陰で栽培することで必要な成分が地中から吸収されます。従来は人工的な影が作られてきましたが、アグロフォレストリーでは自然でヤシの木陰ができます。
アグロフォレストリーによって生産されるお茶とヤシの木の組み合わせは、今は世界でも山丸農園だけということです。ブラジルならではの大自然の恵みに今後も注目が集まりそうです。
山丸農園のお茶とヤシの若芽の売り場
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