8月の第二日曜日は、ブラジルでは父の日です。初等学校（小学校）や幼稚園、保育園などでは、父の日のプレゼントを子どもたちが制作するのが、ごく一般的な風景です。
　プレゼントを制作するだけでなく、特に幼稚園や保育園では父親を招いて園児たちが何かを発表したり、親子が一緒になって何かの活動をすることもあります。

　公立、私立を問わず、各園によって父の日の催し物の企画は異なっており、ブラジルの全ての園で同じ状況とは言えませんが、25年くらい前の日本の物差しでは考えにくい状況を、サンパウロ市内の一軒の公立保育園で目の当たりにすることになりました。

　この保育園では、父の日を目前にした平日の金曜日の授業中に父の日のイベントが開催されました。午前8時半から10時くらいまでのことでした。

　イベントといっても大きなことではなく、父親が招待され、子どもと一緒に凧を制作するというものでした。すでに出来上がった凧に絵を描いて、手作りのビニール製の尾をつけて完成させるという作業でした。作り終わった後は、子どもたちが絵を描いたＴシャツとメッセージカードが父親にプレゼントされました。

　メッセージにはブラジルらしく「パパイ,エウ・チ・アモ（パパ、愛してる〔パパ、大好き〕)」と書かれているのが印象的です。

　日本の25年前の感覚では、金曜日の午前中、一般のサラリーマンの就業時間にイベントが開催されても父親たちは仕事でほとんど来られないのではないか・・・という心配が頭をよぎっていました。

　ところが、そんなことは杞憂でした。クラスの半数以上の父親が保育園を訪れ、子どもたちと共同作業を黙々と行っていました。おそらく、主催する保育園側も、金曜日の朝であっても父親たちは参加してくれるという、ブラジル人同士ならば通じるちょっとした確証を持っていたに違いありません。
　
　「ほとんどのお父さんたちは失業中？」なんて思いそうでしたが、基本的に皆何かしらの仕事に就いていそうです。参加していた知り合いのお父さんは、不動産屋です。

　平日の朝のイベントに多くの父親が参加していたことにカルチャーショックを受けました。

　この参加率の高さは、一つは、ブラジルでは会社よりも家族に重きを置くという風潮があることは否めなさそうです。

　現在、幼稚園や保育所の送り迎えでは、車や歩きで登園する場合にはお父さんの姿も多くなっています。サンパウロでこのようなイクメンが増えたのは、ここ10年から20年のことだと言う意見もありますが、昨今、父親が外で育児参加している風景はあまり珍しくありません。

　他には、ブラジルの職場では、一日何時間という風に労働時間が規定されておらず、月に何時間働けばよいというような規定になっているケースもあり、それも要因として考えられるという意見を聞きました。職場の同僚同士、必要な時には仕事を数時間交代してもらうなど、お互いに助け合えるという環境を作りやすい職場もあるようです。　

　いずれにしても、日ごろは外の仕事で忙しいお父さんたちが、子どもたちの保育の場に少しでも触れる機会を持つことができるというのは貴重な一時に違いありません。

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