マクロビオティックを導入したダイアモンド婚の日本人夫妻、州議会から表彰
2016.09.20 up
サンパウロ州議会より授賞される菊池富美雄さんとカルロス・ジアンナッチ州議会議員
肉食大国のブラジルにあって、サンパウロではベジタリアンレストランが決して少なくありません。そのベジタリアンの筆頭でもあるマクロビオティックをブラジルに導入し、50年以上教育活動の一環としてサンパウロで玄米食レストラン『サトリ』を開いてきたのが日本人移民の菊池富美雄さん(90歳、栃木県出身)と妻信子さんです。
2016年9月15日、既にその幅広い活動からサンパウロ市民賞も受賞している菊池さんに、新たにマクロビオティックの導入者としての功労賞がサンパウロ州議会より授賞されました。
サンパウロの玄米食レストラン『サトリ』の食事
授賞式は菊池さんの指導で健康を取り戻したというカルロス・ジアンナッチ(Carlos Giannazi)州議会議員の呼びかけで執り行われました。式では、マクロビオティックで難病から健康を回復したという数人のブラジル人が感謝をこめて具体的に証言する場面がありました。
菊池さんは第二次世界大戦中は日本軍として南方で戦い、戦後、日本に帰国しました。
「日本の名誉をばん回するために日本を出た」
という菊池さんは、今もその思いに全く変わりはありません。多くの仲間を戦争で失い「生き恥をさらしている」と言う菊池さんは、真の平和を求めて世界各国を歩き回り、主要都市の公的な場で講演をしてきました。
現在のアメリカの100ドル紙幣のコピーを片手に講演する菊池さん
菊池さんが行きついた真の平和への答えは、肉食ではなく、穀物を食べるという事です。
職徳太子の言葉として有名な「和をもって尊しとなす」の「和」は、「禾(穀物)を口にする」と書くように穀類を食べるから平和が生まれ、体の平安も世界の平和も訪れるということです。
菊池さんは授賞式のあいさつでブラジルと同様に肉食大国であるアメリカの歴史を引き合いに出しました。
「アメリカを象徴する100ドル紙幣に描かれたベンジャミーン・フランクリン。彼は貧乏から身を起こして大統領までになったが、金持ちになるにつれて病気になり、原因を探った結果、肉食がわるいことに気付いた。それで世界で最初のベジタリアン協会を創設した」
と、肉食大国のイメージが強いアメリカの代表が最初のベジタリアン協会を作ったという事を強調しました。
サンパウロの玄米食レストラン『サトリ』で食事をする人々
日本では今でこそ肉食も含めて西洋化を進めた福沢諭吉が10000円札の顔になっていますが、以前は「和」、つまり穀類を口にすることを説いた聖徳太子が最高額紙幣の顔でした。
アメリカの最高紙幣が菜食主義の象徴であるベンジャミンフランクリンの顔であるのに対し、日本の方が肉食も含め西洋文化を積極的に取り入れた人物が顔になっているのも不思議な話です。
サンパウロ州議会での菊池富美雄さんの授賞式
様々なタイプのベジタリアンレストランがある中で、和風の玄米と汁物、おかずを出すことで有名な『サトリ』。今では日本人や日系人以上にごく一般的なブラジル人が出入りしています。
肉食大国のブラジルでありながら確実にベジタリアンは認知されており、90歳でかくしゃくと演説され、今年でダイヤモンド婚を迎えられる日本人夫婦の姿には説得力があります。
今後の食への意識はより健康を意識したものへとシフトされつつあることを予感させるような、ブラジル政府から日本人への素晴らしい授賞式でした。
レポーター「大浦 智子」の最近の記事
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