マデイラ島からの移民の祖父母に誇り
2017.11.15 up
カーザ・イーリャ・ダ・マデイラの施設
19世紀から20世紀にかけ、公式記録では世界100カ国以上から約560万人の移民が到着したブラジル。世界各国の移民が近代のブラジル形成に一役買ってきたと言って過言ではありません。
現在は7世、8世…といった、もうブラジル人となっている移民の子孫が珍しくありませんが、第2次世界大戦後に移民した両親、祖父母の子孫なら、子や孫世代がブラジル社会の第一線で活躍している時代です。
さまざまな国から出発してきた移民と各国移民史がある中で、ブラジルの旧宗主国であるポルトガルからの移民史は歴史が古く、細かく見れば、その人的交流はブラジル発見(1500年)以前にまで容易にさかのぼることができます。
そして、ポルトガルの中でも、ポルトガルの自治地域である東大西洋に浮かぶマデイラ島からの移民史は、ブラジル史の中でも見逃すことのできない歴史の一つです。ブラジル研究のためにもマデイラ島を知るのは重要で、2000年以降にも詳細な研究論文が発表されています。
マリアさんとペドロさん
植民地時代から時を経て、第2次世界大戦後に移民したマデイラ島民の子孫も今のブラジルで各地に暮らし、サンパウロ市内にもコミュニティー機関であるカーザ・イーリャ・マデイラがあります。同機関は1954年に発足し、移民1世は高齢化して人数も減ってきましたが、近隣に今もその子どもや孫も暮らしているため、イベントには数十人が集まってきます。
カーザ・イーリャ・ダ・マデイラでマデイラ文化を教えているマリア・サルジーニャさんとご主人のペドロ・ゴンサルベスさんは、共にマデイラ島出身の両親の下にサンパウロ市で生まれました。マデイラ島に深い思い入れがあり、現在はマデイラ島政府の世界各地のマデイラ島移民を調査するプロジェクトNona ilha projetoに携わり、時々旅行でマデイラ島を訪問します。
ファッチマさんのパン屋さんで船の窓の額縁に飾られた両親祖父母の写真
そんなマリアさんの友人の一人が、サンパウロ市内でパン屋さんを経営するファッチマ・オリベイラさん。ファッチマさんは母方の祖父母がマデイラ島から移民し、父親がポルトガルから移民しました。ブラジルでポルトガル人移民がよく従事してきた商売の一つがパン屋さんですが、父親も例にもれずパン屋さんを始め、ファッチマさんが後を継ぎ、24時間営業で繁盛しています。
ファッチマさんはブラジル人のご主人の勧めで、両親、祖父母に敬意を表し、パン屋の建物を改築する時に、建物の外観は移民船をイメージしたデザインにしました。店の入り口や店内には、両親が移民してきたポルトガル船籍ベラ・クルス号の写真の拡大パネルや船の窓を額縁にした両親、祖父母の肖像写真を飾るというこだわりようです。今年7月には、ファッチマさん自身が父親とその7人きょうだいの移民した伝記を一冊にまとめて本にしました。
父親と7人きょうだいの自伝を持つファッチマさん
世界各国からの先祖のルーツに誇りを持ち、ブラジルで生きる子孫が今も多く暮らしています。日本人移民の子孫も例外ではありません。
サンパウロの街を車窓越しに眺めれば、どこもブラジルに見えますが、一歩門をくぐれば、自らのルーツ、世界各地の先祖の出身地に誇りを持ち、同じルーツの者同士、同郷の村人のように話す空気感を時折垣間見ることのできるサンパウロです。
ファッチマさんのパン屋さんに飾られた父親が移民してきた船ベラ・クルス号
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