
三六窯の入り口と熊本地震の後から世話をしているヤギを引く大浦清さん
年明け早々、1月3日に3年前の熊本地震を想起させられる震度6弱の地震に襲われた熊本。今回は大きな被害も少なく安堵(あんど)しましたが、物理的にも精神的にも、まだ過去の地震の傷跡が消えないケースもあります。
そんな中、少しずつ再生の芽を育んできた場所の一つが、最も被害の大きかった地域の一つ阿蘇郡西原村にある「三六窯」です。

三六窯の大浦清さん
三六窯の陶工である大浦清さん(68)=札幌市生まれ=は、学生時代には鉱物を学び、さまざまな道を経て1978年に備前焼作家三村陶伯に師事。その3年後から備前陶苑で陶工として従事した後、88年からインドへ遊学し、陶芸教室を主宰していました。96年に長崎市内で築陶した後、阿蘇の大自然に魅せられ、2003年から現在のひっそりとした山あいに窯と生活拠点を移されました。

三六窯に併設された即売所の一部屋
西洋、東洋の思想や哲学にも思索を巡らせてきた大浦さんのもとには、陶器を求めるお客さんや観光に来られる方々とともに、スピリチュアルな世界やインドをはじめ海外の文化に親しみのある人らが自然と訪れるようになりました。
熊本地震ではそれまでの作品は全て破損しました。コンテナを利用した大浦さん手作りの箱物の家屋こそ壊れることはありませんでしたが、内部は総崩れ。自らも身体の不調を抱えながら、地域の方々やボランティアに支えられ、地道に少しずつ後片付けをして1年後にはようやく窯に火を入れられるようになりました。

熊本地震直後の工房の様子
「日常気軽に親しんでもらえることを心掛けています」と話す大浦さんの作品は、素朴で力強さを感じさせながら、阿蘇の自然から生み出される釉薬(ゆうやく)がぬくもりを感じさせます。日常的に使用される湯飲みやマグカップは特に人気で、リピーターもいます。
「ハワイからわざわざ大きな土鍋を買い付けに来てくれたお客さまも」とのことで、直火で調理してそのまま食卓に出せる便利でおしゃれなお皿や米が絶対においしく炊ける土鍋も人気です。手作りの陶器としてはどれも手ごろな価格です。

三六窯で焼かれる前の器の数々
熊本地震の後、迷い込んできたヤギの世話も日課としながら、愛猫、愛犬とともに自然と融和した暮らし、その中にある陶芸を感じさせてくれる三六窯。自然を受け入れながらの人間らしい生き方を思い返させてくれるような窯元でもあります。
三六窯の住所:熊本県阿蘇郡西原村宮山1731
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