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台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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台湾美食展でスピーチを行う蔡英文総統

台湾美食展でスピーチを行う蔡英文総統

 11月26日に各自治体の首長、議員、地域の長である「里長」を決める統一地方選挙が実施されます。

 選挙に向け、各政党、候補書が動きを見せていますが、蔡英文総統も例外ではありません。蔡総統は「総統」としての公務だけでなく、民進党の「党主席」でもあるので、必要に応じて外出が求められます。そうなると大変なのが、移動先での警備。7月に安倍晋三元首相の事件があってからは、特に重点が置かれるものになったように思います。

 8月以降、蔡英文総統が訪れる場に3回遭遇しましたが、昨年までとは違う雰囲気になっていたように感じたので、紹介します。


1枚目の写真から引いて撮影

1枚目の写真から引いて撮影

 まずは8月5日の台湾美食展。

 3年ぶりに開催されたイベントですが、過去には総統もしくは副総統が来場し、開催の祝辞を述べ、各ブースを視察するのがお決まりのようになっていた感じでした。

 しかし、今回は、開催の祝辞を述べ、その後来賓たちと記念撮影を行っただけで、各ブースを視察することなく、そのまま会場を後にしました。

 この日の前日までアメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問し、中国と台湾の間に緊張感が漂いはじめたこともあってか、マスク越しに見る蔡総統の表情は一見笑っているように見えますが、目が全然笑っていないように見えました。


(左から)蔡英文総統、台灣觀光協會の葉菊蘭会長、日本台湾交流協会の泉裕泰代表

(左から)蔡英文総統、台灣觀光協會の葉菊蘭会長、日本台湾交流協会の泉裕泰代表

 個人的に驚いたのが2枚目。

 元々警備が固く、壇上でスピーチを行う際には数人の担当者が距離を保ったところについていますが、この時は以前よりも多く感じました。

 写真には写っていませんが、背後の上の階にも数人単位で警備担当がいました。以前もいたかもしれませんが、この日のようにはっきりと目立つような感じで見かけたのは初めてでした。

 重複しますが、いつもなら開会セレモニー後にブースを巡り、担当者の話を聞き、記念撮影も行いますが、今回はなし。

 7月の安倍晋三元首相の事件、前日までのペロシ下院議長の訪問が大きく影響を与えているように感じました。


日台フルーツ夏祭りの会場より

日台フルーツ夏祭りの会場より

 その次は8月20日に行われた日台フルーツ夏祭り。

 私は、facebookの情報とプレスリリースを元に訪問しましたが、開会セレモニーと場内のブースとステージ活動に関する内容以外のことは全く知りませんでした。

 だいたい15時くらいからでしょうか。
 会場の夏祭りの雰囲気に似つかわしくない警察官、目つきの鋭い屈強さがうかがえる私服の男性、会場を周り忙しくメモを取り続ける公務員風の人たち… 極め付けは、大型犬のロープを引っ張る男性の姿。犬は仕掛けられている爆発物を調べる探知犬だったようです。

 その後、警察官や担当者と思しき人に複数回声をかけられましたが、肩に一眼レフのカメラをぶら下げていたことが災いしたようです。その度に説明をするのは面倒くさかったです。

 だいたい、18時頃だったでしょうか。
 蔡英文総統が来場し、日本台湾交流協会の泉裕泰代表らと一緒に場内を回りました。軽い気持ちで撮影しようとしたら、警備担当者がすぐに駆けつけ、「許可のない撮影は禁止!」と一喝されました。

 加えて、蔡総統訪問時にその場にいた人たちは、その場を離れることも禁止。
かと言って、蔡英文総統を囲む集団に近づくこともできず、遠巻きでそれを見つめるしかない状態になりました。

 おそらく、急遽決まった訪問で、調整の結果そうなったのだろうと推測しましたが、行動の不便さが過去最大になったように感じ、この時は蔡総統とその周りにいる警備陣をひたすら避けていました。


新北市蘆洲區にあるお寺

新北市蘆洲區にあるお寺

 蔡英文総統が新北市蘆洲區にあるお寺を訪問したのは、9月15日の20時過ぎ。この日は、新北市市長選挙に立候補した前交通部部長で前台中市長の林佳龍氏、新北市市議会議員選挙に立候補した当該選挙区の候補者(現職を含む)と立法委員(国会議員に相当)が、11月26日の選挙の必勝祈願を行いました。

 お寺の入口は、荷物チェックが行われ、金属探知機の検査も実施。報道関係者は別のところで荷物と撮影機材の登録を行なっていました。

 私は入口の前で様子を見ていましたが、警備担当者と何かもめた人が囲まれ、別のところに連れて行かれるところを2回見かけました。同時に人混みの中に私服姿の警備担当者も多く見かけ、ただならぬ緊張感を感じました。

 帰りに蔡英文総統が待っていた人たちの前を通り、比較的近い距離で手を振っていましたが、周囲の警備陣は今まで一番多かったように感じました。

 総統の警備は元々厳しいのですが、蔡英文総統になってからは、厳しさはあっても、周囲の人たちの目つきがこころなしか優しくなったように感じ、「大変ですね、お疲れさまです」と声をかけたら控えめに「いえ、いえ…」と返ってくるるような雰囲気がありました。しかし、8月以降は目つきが以前のように厳しさが戻り、人数も増え、警戒感が一気に上がったように見えました。

 7月の安倍晋三元首相の事件と昨今の中国との関係を考えると、警備が強化されるのはやむを得ないですが、その影響で11月の選挙に向け、民衆との距離感を縮めるのがますます難しくなっていくのは、蔡総統にとって悩ましいところではないでしょうか。


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