オランダには、｢この番組が始まると、国中が静まりかえる｣といわれる人気番組があります。２００４年の放送開始以来、４０％もの高視聴率記録をシーズンごとに塗り替えているその番組名は「農家の嫁探し（ＢＯＥＲ　ＺＯＥＫＴ　ＶＲＯＵＷ）」。日本と同様異性との出会いの少なさに悩む農家の人たちと、結婚相手を探している異性たちが１２週連続で出演する「お見合いドキュメンタリー番組」です。

　シーズン１回目の放送では、嫁探しをする男性たち１０人のみが登場。栽培している主要な作物や農業経営の規模などを紹介しながら、熱きラブコールを電波に乗せて発信することから始まります。これを見て我こそは！と思い応募した女性たちの中から、男性１人につき各５人がパートナー候補として選ばれ、男性たちの農家に招待され、牛の世話や小麦の収獲などを手伝いながら、相性が良いかどうかを確かめ合う中、番組は回を重ねていきます。そして最終回でカップル誕生なるかという流れです。

　オランダは九州とほぼ同じ面積の小国ながら、生花やジャガイモ、チーズなどが名産で、全農作物の輸出額は米国に次いで堂々世界第２位を誇る農業大国。「食の安全」を支えるだけでなく、外貨獲得の有力な手段にもなっている農業は、全国民の未来にとって極めて重要な産業です。しかしその担い手たちの平均年齢は男女とも41歳で独身者も多く、平均年収は約６００万円とはいえ仕事も大変。パートナー不足が不安視されています。

　登場する男性陣もみな、｢仕事が忙しすぎて相手を探す時間がない｣とか、｢職業は農家です、と言ったら相手が逃げてしまった｣など、苦い経験を持つ人ばかり。番組の序盤ではおずおずしている彼らですが、女性たちと農作業を行ないつつ衣食住をともにする中で次第に心を開き、意中の相手に恋心を抱くそのほほえましい様子は、見ているこちらもほのぼのとさせられます。

　そしてめでたく最終回でパートナーを見つけられた暁には、｢ひとりぼっちだった僕のもとへ、こんなに素敵なお嫁さんが来てくれたなんて、まるで夢を見ているようだ！｣とうれし涙を目に浮かべながら喜ぶ男性陣の満面の笑みに、見ているこちらの涙腺もゆるみ……。
　
　カップル誕生率８割を誇り、農家の独身男性たちをしあわせにするだけでなく、視聴者もあたたかい気持ちにする「農家の嫁探し」。テレビ局のみなさん、日本でもいかがですか？

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