純白の布を身にまとい、足音も立てず素早く怪談（失礼！変換間違い）、階段を上り２階へ消える謎の幻影―、これがブラジルに出没する怖いお化けの代表格です。
　筆者の姪が20歳ごろにサントス海岸近くの民家で見た幽霊は、やはりそれ。「深夜、数人の友達と空き家の前の細い道を歩いていた時、白い物体が庭からベランダへスーッと駆け上がり、いなくなった」そうです。「恐ろしかった」にしては、笑顔で長々と説明していました。気の強い姪っ子だから“お化けのＱ太郎”くらいにしか感じなかった？

　愉快なお化けでは、パイプをくわえて赤い帽子をかぶり、右脚はなく左脚だけで裸のままピョンピョン森の中を走り回る“サッシペレレ”がいます。いたずら好きな黒人の男のお化けです。親や先生に注意された子供たちの中には、自分がやった悪さは全部サッシペレレの仕業、と言って責任転嫁する者もいます。
　『妖怪世界編入門』（小学館）には、背中に口がある森の巨人“キブンコ”とか巨大な山の主“カポイラ”という怪獣の化け物もいるそうです。が、巷間あまり耳にしません。

　日本の幽霊には女が多いけどブラジルのサッシペレレ、キブンコ、カポイラは男。さて、白い服を着た幽霊は女でしょうか、男でしょうか。一度でいいからお会いしたい。なぜ階段を上らなければならないのか。ジャーナリストの私、じっくり階段に座って会談しながらその理由を聞いてみたいです。

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