「村上春樹さんはシャイでおとなしい人」独語訳者、村上文学等について語る
2015.05.28 up
5月下旬のある晩、ベルリン市内で村上春樹の作品の朗読会が行われました。翻訳者であるウルスラ・グレーフェさんが自ら朗読し、その後訳者としての仕事などについて語るというとても興味深いものでした。
この日、小さめの会場は満員。約数十人が参加していましたが日本人はわずか2、3人。村上春樹はドイツ語圏でも絶大な人気なのです。
朗読したのは最新の短編集「女のいない男たち」にある「木野」と2日前に独語が出版されたばかりという、村上氏の処女作である「風の歌を聴け」の最初の数ページでした。目をつぶってじっと朗読を聞いている人が多かったのが印象的です。
村上春樹のドイツ語訳を手掛ける翻訳家、ウルスラ・グレーフェさん
朗読の後は参加者から次々と質問が寄せられました。「村上春樹さんに初めて会ったのは昨年末の文学賞の授賞式にて。とてもシャイでおとなしい人だった」と村上氏についての印象を語り、「翻訳でわからない箇所については村上氏に直接質問する。必ず2日以内にメールの返信が来る」などのやり取りでは会場を沸かせていました。
また「原文の村上サウンドをどうやって独語訳するのか?」との質問に対しては、「何よりも自分の直感を信じ」、「書いたものを声に出して読む」のだそうです。
グレーフェさんによれば「すっともう一つの世界に移行するという村上文学のスタイルは西洋文学には無くミステリアスで、そういう意味では村上さんの本は日本文学的だと思う」とのことでした。
ビーガン向けの味噌ラーメン。オーガニック農法の野菜のみを使っている。
村上春樹の作品はドイツでは長編、短編共にほぼ全部出版されています。原語版が出てから一年後くらいにドイツ語訳が出るのは相当早いペースだと思うのですが、出版社は英訳が出る前に出版するようにしているそうです。理由は英語版が先に出てしまうと英語で読んでしまうドイツ人の読者が多いからだそうですが、そのためにグレーフェさんはかなり早いスピードで翻訳を仕上げなければならないそうです。
今回、朗読会の会場になったのは時々、セミナーなども開催されているという市内の小さな日本食レストラン。会の後は希望者には別途料金でラーメンも出されました。オーガニック農法で栽培された野菜だけを使ったもので、おいしく頂きました。
グレーフェさんはとても気さくな方で、参加者と談笑しながらラーメンを食べていらっしゃいました。言語や文化の壁を超えた、村上文学の偉大さを改めて実感した日でした。
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タグ:ドイツ、ベルリン
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