ブラジル

ブラジル:サンパウロ

日下野 良武(くさかの よしたけ)

◎職業;ジャーナリスト、ブラジル文化研究家
◎居住都市;サンパウロ市(ブラジル国)

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サンパウロ市の地下鉄車内で

サンパウロ市の地下鉄車内で

 オリンピックの後に開かれたパラリンピックが無事、閉幕した。パラリンピックでのブラジル選手の活躍は目覚ましく、金メダル14個を獲得。国民はオリンピックと同じ熱い声援と拍手を送った。ブラジル人は障がいのある人や高齢者への思いやり、心配りの気持ちが強い。
 ブラジルは世界で最もカトリック教徒が多い国。国民の70%以上が信徒と言われ、博愛精神が文化として浸透している。


 大通りの横断歩道でよく目にするのが、車いすを押して手伝う青年の姿。車いすの人は渡った後で、握手しながらこれに応えてお礼を言う。車の運転者は、信号が青になっても渡り切るまで待つ。この人間愛の光景に出くわすと、胸に熱いものを覚える。
 また、高齢者にも気遣う。電車やバスに乗ると、若者が席を譲るのをたびたび見掛ける。ある日、サンパウロ市の地下鉄車内で申し訳ない思いをした。


 私は73歳になる。今でも電車やバスの中では空いていても腰を掛けない。立っていたら、ネイマール(超有名なサッカー選手)に似た青年から声を掛けられ、高齢者専用席へ手招きされた。すぐに「次の駅で降りる。ありがとう」と返事した。ところが、彼も私もずっと先の駅で同時に降りたのだ。「厚意を素直に受ければよかった。ウソを言ってごめん」と、自責の念に駆られた。それ以来、ありがたい誘いには従うようにしている。


 障がいのある人や高齢者には進んで手を差し伸べよう。受けた側もはっきり感謝の言葉を返そう。それでこそ、お互いの気持ちが通じ合う。


 日本ではどうか。電車の中で若者が寝たり、本を読んだりしながら座る。その前でお年寄りが荷物を持って立つ。このありさまをブラジル人が見たら眉をひそめるだろう。「ブラジル」と聞けば日本人には治安の悪さが先に立つようだが、心優しい人間も多々いる。


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タグ:サンパウロ

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