
三民家商(サンミンジャーシャン)の謝玉娟(シェ・ユィジェン)ヘッドコーチ
先日、日本で高校のバスケットボール部のキャプテンの選手が自宅で首を吊って自殺する、という悲しいニュースをインターネットで知りました。また、その原因が顧問の先生(コーチ)の“体罰”と言われ、現在に至るまで色んなことが報道されています。
この報道を見て思い出したのが、先日、高雄で見た台湾の高校バスケHBLのある試合。
以前紹介(下記URL参照)した三民家商(正式名称は高雄市立三民家事商業職業學校)の謝玉娟HCが、選手たちに見せた“愛情”です。
そこで、今回はそれを皆さんに紹介したいと思います。
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=20101224222434

謝HCが各選手に残した直筆メッセージ
その試合は、最終日である2012年12月30日の敗者復活戦(運営ルールの詳細は以前の書き込みをご参照ください)でした。
試合前にベンチをのぞいたら、選手が座るイスの背もたれのところに上の写真のようなメッセージが貼ってありました。
上の写真のメッセージは、
HBL No.1センターへ
この3年間で一番うまくなったのはあなただよ
自分の能力を信じて、大事な局面で(今の)自分自身を乗り越えて
娟姉(ジュエンジエ、謝HCの愛称)
と書かれていました(筆者訳)。
謝HCが前日に夜に全選手12人分(注:HBLは登録可能人数12人で、原則変更不可です)書き込み、用意したものです。

試合中、選手の手を握り声をかける謝HC
予選2勝3敗でB組4位の三民家商が、この時対戦したのは午前の試合で勝利したA組5位の松山高中(ソンシャンガオジョン、正式名称は台北市立松山高級中學)。松山高中は2009~2011年に3連覇を達成した実績だけでなく、優秀な人材も揃っていて、弱い相手ではありません。
試合は、戦力だけでなく、午前の試合の勝利で勢いをつけ、適度に体が温まり、試合カンも残っている松山高中が有利ではないか、と私は見ていました。

試合終了直後、喜びに浸る選手たち
試合が始まり、三民家商は序盤リードを許しますが、午前試合をしている松山高中の選手たちは徐々に疲れを見せはじめます。第2Q後半から、しばらくシーソーゲーム気味に試合が進みますが、三民家商のリードは時間の経過と共に広がっていきました。加えて、三民家商の地元・高雄で試合をしていることから、客席を埋めたほとんどの声援は三民家商に集中。松山高中の選手たちは、いわゆる“アウェー”の雰囲気に飲まれただけでなく、不利な戦況もあり、精神的に追い込まれていきました。
三民家商の選手たちは、応援だけでなく、2、3枚目の写真にある謝HCの“愛情”を力に変え、最後は88-77で勝利し、上の写真のように喜びに浸りました。

全員集合し、みんなで準決勝リーグ戦での奮闘を誓い合いました
三民家商の前回は、1次予選3連敗でした。
この時、謝HCは当時の3年生の主力選手を中心に、4人をチームの規律違反を理由に退部処分にしました。そのため、経験が浅い1、2年生がエントリーしましたが、それが影響した格好になりました。
迎えた今回は、予備予選からスタート。そのまま1次予選に勝ち上がりましたが、1次予選は1勝2敗。ギリギリで2次予選進出を決めました。
2枚目の写真のメッセージは、謝HCがそうした背景と現実を受け止め、敗退を覚悟したからこそ、できたのかもしれません。謝HCは、2枚目の写真を見ながら、「あたしは、あまり選手たちを怒鳴ることはないから、こうやって普段から思っていることをね……」と振り返りました。
確かに、試合中の謝HCは、選手を怒鳴ることは少ないですが、檄を飛ばし、言うべきことは、はっきり言います。また、”闘魂注入(想像してくださいね)”も、1度だけですが見たことがあります。
三民家商の選手たちは、他の強いチームの選手たちと比べて、未熟な部分が目立ちます。謝HCはじめ、他のコーチ達がそれを厳しく注意することも当然のようにあります。
それでも、こうして結果を残せたのは、謝HCの“愛情”が根っこにあってこそ、だと言えます。
この謝HCが見せた“愛情”が、悩める日本の指導者の方の一助になれば、と思います。
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