台湾の高校生が迎えた冬休み 法律セミナー 編
2014.03.03 up
セミナーの様子
皆さんは「法学部」というと、どんな印象を持っているでしょうか。
「何だか難しそう」とか「勉強が大変」といった感じでしょうか。しかし、日本では法学部がある大学も多数あり、TVや雑誌などで法律に関する知識を身に付けることができるので、どちらかというと身近な印象があります。
台湾では、「法学部出身」というだけで「すごい!」とか「どうして弁護士にならないの?」となり、何だか敷居が高い印象を持たれます。そうした経験を経て、フリーペーパーで知ったのが今回紹介する高校生向けの法律セミナー。担当の方の許可をいただき、その様子を見せていただくことになりました。
以下、その様子を紹介します。
開校式であいさつをする李永然(リー・ヨンラン)弁護士
セミナーを主催しているのは、財団法人永然法律基金会。
その財団法人の代表は、上の写真の李永然弁護士。自身の弁護士事務所の運営だけでなく、大学でも教壇に立った実績もある方です。
前記と重複しますが、今の台湾社会では、法律に対する認識は「勉強できる人がやる学問」で、特別で敷居が高い感じになっています。さらに、小、中、高の社会科、公民で必要最低限の法律知識を学んでいるにもかかわらず、忘れている人も多く、ますます専門化しつつあります。李弁護士は、そうした状況を少しでも変え、「法律は私たちの生活に密着した大切な知識であり、決して敷居が高いものではない」ということを広く知ってもらうため、財団法人永然法律基金会を設立。出版事業だけでなく、今回紹介するセミナーも主催するに至っています。
セミナーは、2011年7月から明日の台湾を担う高校生たちを対象に行っていて、今回で9回目を迎えました。特徴は、参加費用が600元(約2,026円)と大学が主催しているセミナーの何千元と比べ安く、台北地区以外の高校生たちにも枠を設け、参加しやすくなっていることです。
以前は花蓮から高校生を招待したこともありますが、今回は高雄の3校の高校生18名が招待を受け、引率の先生と共に参加しました。
李永然弁護士の講座
セミナーは1月21~24日に行われ、高校生48名が参加しました。
開校式後、すぐ行なわれたのは、李永然弁護士による法律に関する基本講座。法律ができた過程を歴史の流れからひもときながら説明していっただけでなく、李弁護士自身がどういった過程を経て弁護士になり、現在に至ったかを、受講生である高校生の目線に合わせて説明していきました。
民法のセミナーの様子
4日間のセミナーは、現役の弁護士、検察官、大学教授を講師に迎え、民法、刑法の基礎知識、高校生にありがちな法律問題、人権に関する基礎知識などの講座を行いました。
その中で、私が一番印象に残っているのは、上の写真の民法の講座。
アメリカで実際にあった民事訴訟の例をもとに、4つのグループに分かれて助手役の大学生たちを中心に討論を行いました。その後、受講生たちを原告、被告、証人、弁護人、裁判官役に分け、簡単な模擬裁判を行いましたが、自由で豊かな想像力を持つ高校生らしく、講師の張謀勝(ジャン・モーション)弁護士をはじめ、様子を見守る周囲の大人が予想していない展開になり、終了時間まで大爆笑に包まれました。
セミナー最大のハイライト、法廷見学 (注:台湾の裁判所は、通常カメラ持ち込み禁止で、入口で預けなければなりませんが、今回は特別に許可をいただいております)
このセミナー最大のハイライトは、台北高等裁判所の刑事部門(注:台北高等裁判所は刑事部門と民事部門に分かれていて、建物も違います)の法廷内見学。受講生たちは、法曹関係者か裁判の当事者にでもならない限り座ることができない裁判官席、書記官席、原告人席、被告人席に座ったり、いすにかけられていた法服を着用し、その気分を楽しむなど、思い出づくりに励んでいました。
セミナー終了後、参加した一部の高校生に話を聞いてみました。
3年生のある参加者は「法学部志望で大学進学前に(授業などを)体験したかった」と進路を見据えての参加と強調。各講座終了後、熱心に講師に質問していた2年生のある参加者は「卒業後の進路を法学部か医学部か迷っているところで、(参加して)進路決定の参考にしたかった。(それだけでなく)自分自身の視野を広げたかった」と充実した表情を見せて振り返りました。
李永然弁護士をはじめ、基金会の方々の努力が実るのはまだ先の話ですが、このセミナー出身者が講師になって帰ってくる日が早く来るといいな、と思い、様子を眺めていました。
レポーター「小川 聖市」の最近の記事
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1 - Comments
かなやより:
2014 年 03 月 03 日 16:08:21
民法などは暮らしにも関わりの深い法律。高校生から意識を高める上でも、良い取り組みですね。
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