ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

前の月へ

2024.4

次の月へ
S M T W T F S
 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30     

ブラジル教育省が認可した7年生の歴史教科書に挿入された1597年の長崎で起きた『26聖人の殉教』の図

ブラジル教育省が認可した7年生の歴史教科書に挿入された1597年の長崎で起きた『26聖人の殉教』の図

 ブラジル教育省が認可した2014年から2016年用の7年生(日本の中学1、2年生相当)の歴史教科書の一つの内容に驚きました。

 全288ページにわたって世界各国の地域小史が紹介されている中で、12ページを割いて日本が紹介されています。

 その締めくくりのページには、1597年に長崎で起きた『26聖人の殉教』が明瞭な挿絵を用いて紹介されています。(挿絵は長崎県の26聖人記念館所蔵)

 日本でも長崎の人々やカトリック信徒には26聖人の話はなじみが深いかと思います。それでも、中学校年齢で日本全国の公教育の現場ではなじみの薄い話題だと思います。ましてや衝撃的な26聖人がはり付けにされて処刑されている絵は、少なくても私が教育を受けた1990年代には一般的ではありませんでした。


ブラジル教育省が認可した2014年から2016年用の7年生(日本の中学1、2年生相当)の歴史教科書

ブラジル教育省が認可した2014年から2016年用の7年生(日本の中学1、2年生相当)の歴史教科書

 ブラジル国籍を所有するブラジル人でありながら日本人のアイデンティティーがある上、日本人とも見られがちな息子は、
 「こんなにたくさん異教徒を処刑して「ひどい」と学校で言われたらどう答えたらいいんだ」
と一言。
 「もっともヨーロッパ人もブラジルや世界でひどいことをやってるし、ブラジル人は「ひどかったなあ」くらいで話は終わるけどね」
と続けます。基本的に、ブラジル庶民は楽観的な国民性です。


2011年の東日本大震災の写真に始まる日本史のページ(ブラジル教育省が認可した2014年から2016年用の7年生の歴史教科書)

2011年の東日本大震災の写真に始まる日本史のページ(ブラジル教育省が認可した2014年から2016年用の7年生の歴史教科書)

 この歴史教科書の日本のページは、2011年の東日本大震災の写真に始まり、「日本がなぜ日本と言われるのか」という話題で「日出づる国」に相当するポルトガル語の解説から説かれます。

 7年生の歴史が主に中世に焦点を当てていることもあって、ブラジルの旧宗主国であるポルトガル人が日本に到着した16世紀の話が主な話題の一つで力が入っています。

 『最初の西洋と(日本と)の出会い』というトピックでは、ポルトガルの古美術博物館に所蔵されている「16世紀末の日本でのイエズス会士」の挿絵とフランス国立図書館に所蔵されている「18世紀の日本でヨーロッパ人がクリスマスイヴを祝う様子」を描いた版画が紹介されています。クリスマスイヴを祝う場面では音楽隊や召使いも描かれていますが、日本人には見えにくいブラジルにも多い褐色肌の人たちです。


ブラジル教育省が認可した2014年から2016年用の7年生の歴史教科書に挿入された「18世紀の日本でヨーロッパ人がクリスマスイヴを祝う様子」を描いた版画

ブラジル教育省が認可した2014年から2016年用の7年生の歴史教科書に挿入された「18世紀の日本でヨーロッパ人がクリスマスイヴを祝う様子」を描いた版画

 『26聖人の殉教』は今は昔とは言え、とらえ方次第では、正確な情報の伝わりにくかった時代に異国の人から見れば、昨今世界を震撼させている中東をはじめとする無法集団(ISIL)のように見えなくもない過去の日本での出来事です。

 カトリックを主にキリスト教国としての位置づけにあるブラジルだけに、歴史教科書でも日本といえば『26聖人の殉教』は重要なエピソードと言えそうです。


『最初の西洋と(日本と)の出会い』を記述したページ

『最初の西洋と(日本と)の出会い』を記述したページ


レポーター「大浦 智子」の最近の記事

「ブラジル」の他の記事

0 - Comments

Add your comments

サイト内検索

Name(required)

Mail(will not be published)

Website

Archives