イタリア中部地震と2009年ラクイラ地震
2016.09.01 up
8/25付 コリエレ・デッラ・セーラ紙一面
8月24日(水)午前3:36にイタリア中部ラッツィオ州、マルケ州、ウンブリア州、アブルッツォ州の4州にわたるサラリア街道沿いの山間部の集落で、M6.2の地震がおこりました。
27日(土)にはアスコリ・ピチェーノでマルケ州犠牲者の国葬が行われ、30日(月)の午後にはアマトリーチェでラッツィオ州犠牲者の国葬が行われ、マッタレッラ大統領とレンツィ首相は両方とも列席しました。
地震のシンボル、左;今回・右;ラクイラ 8/25付イル・メッサッジェッロ紙
テレビに流れる地震の恐ろしい光景は、記憶にまだ新しい2009年のラクイラ地震が思い出されました。
7年前ラクイラ市のサンテウザニオ教会の鐘楼の時計は地震が発生した3:32を射して止まったように、今回最も被害と死亡者が多かったアマトリーチェ町のチヴィカ塔の古い鐘楼の時計も地震が起きた3:36で止まり、この止まった時計が今回の地震のシンボルとなりました。
今イタリアではこの2つの地震の共通点もあるなか、対比し報道されています。
両方とも深夜3時就寝中の暗闇の中での大地震。震度もラクイラ地震はM6.3、今回はM6.2。死亡者も数値が近く、ラクイラ市7万人の人口に対して300人死亡者。一方、今回一番地震の被害の多かった3つの町アマトリーチェ、アックモーリ、ペスカーラ・デル・トロントは、冬季の人口は5千人。しかし、夏休みになると、ローマなど大都市からは親戚が訪れたり、セカンドハウス所有者も多く、加えて夏の村祭りなど観光客も増えるので人口が10倍ほど増えると言われます。死亡者数は本日までで292人、そのうちローマ出身者は70人と発表されました。
昨年春、アマトリーチェ恒例のロバレース:ロバ市内行進
一方地震後、レンツィ首相を始め政治家や有識者が発言しよく耳にする言葉で、英語の”New Town(ニュータウン)”があります。まさに言葉とおり、震災後の再建について、ラクイラ市は市外に新しいニュータウンを作りました。しかし、今回震災にあった町々は、被災者達が住み慣れた土地を離れたくないという気持ちを重んじ、集落外に新たに町を作るのではなく、震災した場所を再建し町を作り直そうという意気込みが感じられます。
被災地を訪れたラウラ・ボルドリーニ代議院議長は、「震災後に新都市を作ってそこで被災者が新生活をしても人々は幸せになれず時間もかかる。ニュータウンの哲学は機能しない。被災者達は被災後の一時的な状態が最終的なものにならないことを訴え、できる限りその気持ちをくんであげなければならない。」と発言しました。
昨年春のロバレース場と今回国葬を行った同じ広場。のどかな風景
土地へのこだわりではありませんが、昨日のラッツィオ州犠牲者の国葬は、当初臨時緊急対策本部を設置され、安全面や天候も考慮し同州のリエーティで行われる予定でした。しかしながら、国葬予定日前日にアマトリーチェし町長を筆頭に被災者達や犠牲者の家族が猛反発。同町長がレンツィ首相に「あなたも市長をしたことがあれば、市民の気持ちを汲むことが一番ではないか?」と電話で直談判したといわれ、首相は急きょアマトリーチェで国葬を行うことを決断。「感情と規則のはざまで、ときに感情を重んじなければならず、政治が市民に仕える証となった」と、同町長は感無量に発言したようです。
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