ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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個々の家の前で素材やデザインが全く異なり、段差がある歩道。各家の門と道路を結ぶ歩道は勾配がついている。

個々の家の前で素材やデザインが全く異なり、段差がある歩道。各家の門と道路を結ぶ歩道は勾配がついている。

 サンパウロ市内の住宅街の歩道は、個々の家や商店の前で、まったくデザインや素材が異なります。隣の家が石畳でも、その隣の家はセメントで固めただけの歩道、という風に、まさに「自分は自分、人は人」というのを地でいく土地柄です。そのため、全体としては何の統一感もありません。

 家の前の歩道は、家の所有者が手入れをしていることが多く、隣の家の歩道とは高さまで違うことがほとんどです。歩道の色や柄など、デザインの統一感のなさだけならともかく、隣の家の前の歩道との段差は、歩行者が歩きにくい要因です。段差も1センチ程度なら気になりませんが、10センチ、20センチの段差は珍しくありません。

 また、雨期の集中豪雨の時には雨水があふれるため、家に水が入らないように、住宅は道路より高い位置に建てられています。そのため、家の門と道路に挟まれた歩道は、水はけがよくなるように(同時に車が出入りしやすいように)勾配がついていることが多く、歩きにくい要因となっています。

 実際に歩道を歩く時、「歩道なのに、歩きにくい歩道」というのが日常的な状況です。特に、自転車やベビーカーを押していては歩きにくい歩道が珍しくありません。

 そのような住宅街では、人々は歩道を歩くのではなく、歩道を降りて道路の隅っこを歩くという事になります。何のための歩道か分からなくなります。


サンパウロ州の形を抽象化してデザインされた歩道のタイル

サンパウロ州の形を抽象化してデザインされた歩道のタイル

 統一感のない歩道の中で、数は少ないですが、町ならではの歩道を見かけることがあります。

 例えば、サンパウロ市内なら、サンパウロ州の形を抽象化したデザインのタイル張りの歩道です(写真2と3)。他に、東洋人街のリベルダーデ地区には、「サムライ模様」と称されることのある、手裏剣のようなデザインのタイル張りの歩道があります。
 ところ変わって、サンパウロ州のオランブラというオランダ移民が主体となって築かれた町では、オランダやオランブラの町のシンボルである風車や木靴、チューリップの模様が施されたモザイク状の歩道が目に留まります(写真5)。
 まだ行ったことのないブラジルの多くの町にも、町ならではの歩道のデザインがあるかもしれません。

 ブラジルの歩道は、決して町全体の歩道に統一感が感じられる素地がないわけではありません。自治体によっては歩道が比較的きれいに整備された町もあります。もう少し長い目で町の変化を見守っていくしかないのかもしれません。


サンパウロ州の主要な河川の地図。赤部分がサンパウロ市(出典・ブラジル地理統計院)

サンパウロ州の主要な河川の地図。赤部分がサンパウロ市(出典・ブラジル地理統計院)


東洋人街の「サムライ模様」と称されることのある歩道のタイル張り

東洋人街の「サムライ模様」と称されることのある歩道のタイル張り


サンパウロ州オランブラの歩道でモザイク状に風車がデザインされた歩道

サンパウロ州オランブラの歩道でモザイク状に風車がデザインされた歩道


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