ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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解体され始めたピラルク。包丁を入れるために硬い腹部のウロコを除去するのも作業の一つ(魚の周囲に散っているのはウロコ)

解体され始めたピラルク。包丁を入れるために硬い腹部のウロコを除去するのも作業の一つ(魚の周囲に散っているのはウロコ)

 アマゾン河を遊泳する世界最大級の淡水魚が「ピラルク」です。(大きいものでは体長3m、重さ250kgから300kgに達すると言われる)

 そのピラルクが、特に日本人の間では「お刺身」でも食べられる事が、近年、知る人ぞ知る常識になっています。

 魚なら何でもお刺身にしてしまうという、「異国でもお刺身を食べたい日本からやってきた人々」がブラジルにもたらした日本文化から生まれたのが、ピラルクのお刺身です。


刺身にされる前のピラルク

刺身にされる前のピラルク

 ピラルク料理はサンパウロ市内なら、日本食レストランや魚料理店の一部などで注文する事ができます。

 ピラルクのお刺身は、どんな料理にでも合う淡白な味わいとモチッとした食感が特徴です。一般の魚に比べて身が締っているため、「うすづくり」にされるのが基本で、しょう油とわさびがあれば、マグロやサーモンのようにとてもおいしく食べやすいお刺身です。


お刺身にされたピラルク(サンパウロ市のレストラン「Rancho da Traira」にて)

お刺身にされたピラルク(サンパウロ市のレストラン「Rancho da Traira」にて)

 ブラジルでピラルクをお刺身にして食べられるようにした仕掛け人は、日本から30年以上前に移住された鴻池龍朗さん(61歳)です。鴻池さんは水産技師で様々な養殖に関わってこられ、ピラルクの養殖の第一人者であり、現在は水産養殖コンサルタントとしてもご活躍されています。

 鴻池さんはピラルクの美しさと低酸素の中でも生きられるという生命力に魅せられ、1996年頃にピラルク養殖を目指して実験を始められました。1998年から1999年には正式にサンパウロ州立農務局と共同実験を行い、2001年には養殖実験結果の報告書を製作発表されました。

 ピラルクがお刺身として市場に出始めたのは5、6年前くらいからの事です。アマゾン河の魚のお刺身が食べられるという珍しさから、今ではブラジルに暮らす人なら一度は食べておかなければブラジルを語れないような存在とも言えます。

 鴻池さんによると、アマゾン河で漁獲される平均的なピラルクのサイズは2m(70kgから80kg)ということで、お刺身にする場合は、それよりやや小ぶりの10kgから50kgの間のサイズが使用されるという事です。


ピラルクを刺身にする鴻池龍朗さん

ピラルクを刺身にする鴻池龍朗さん

 ブラジルの魚料理は、香味野菜やハーブと塩で下味をつけてフライパンやグリルで焼かれるのが一般的です。ココナッツミルクを調味料に使うのも好まれます。「モケッカ」という、パーム油とココナッツミルク、コリアンダーを味のベースにした魚介類の鍋料理も人気があります。

 アマゾン地域ではピラルクも人や家庭によって好き好きに料理されている事かと思いますが、鴻池さんはお刺身・しゃぶしゃぶ・ちり鍋・セビッチェ(ペルー料理)・フライ・西京漬け・蒸し焼きにして、和風のピラルク料理を家庭では作られるという事です。

 要望があれば、人の集まるパーティーなどに出張して、ピラルクの解体からお刺身にするまでのデモンストレーションも行われています。


刺身にするピラルクを持つ鴻池龍朗さん

刺身にするピラルクを持つ鴻池龍朗さん


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  • 7 コメント

7 - Comments

石田より:

2013 年 11 月 01 日 21:16:42

ピラルクなら、刺身何人前できるんでしょうね?
腹一杯食べてみたい!!!

oouraより:

2013 年 11 月 03 日 08:05:34

うーん、何人前でしょう!?確かにもちもちした食感であっさりさっぱりしていてサーモン感覚で食べられます。

小島瑞生より:

2013 年 11 月 03 日 20:01:07

大浦さん今日は!
ピラルク巨大なので、さばきがい(?)がありそうですよね!お値段的には一般料理(ブラジル料理)に比べてやっぱりお高くなりますか?
スイスにも刺身が売られていますが、0.5秒ほどで完食できそうな10切れほどの小さいサイズで3000円ぐらい取られるので、ピラルク一匹分食べてみたいです(笑)

oouraより:

2013 年 11 月 04 日 21:56:07

〉小島さま
 10切れ3000円!!食べた後味が苦くなるような価格ですねぇ!
 ピラルクはポピュラーなお刺身ではありませんが、写真のもので確か20レアルちょっとだったと思います。約1000円です。ちなみにブラジルの川魚の刺身で(養殖ですが)ポピュラーと言えばティラピアです。一匹500円くらいで、薄切りですが50枚くらいはあるかなあ。数えるのが面倒臭いくらいたくさんの枚数です。大人二人ならもういいやってくらい一杯あります。大きめのアジやカツオも美味しいです。一匹750円くらいで、アジは夫婦でたたきで食べるにはまあまあな量です。カツオはパーティーで自家製たたきを作れば、十分おもてなしできるボリュームです。ただ、ブラジル全体で人気で、確かに食べやすいだろうと思うのは断トツ、サーモンとマグロです。こちらは上述の魚と同じくらいの量があっても3杯から4倍の値段です。それでも日本円にすると3000円くらいと思うので、決して10枚しかないということはあり得ません!!密かにサンパウロは日本と同じ魚は少なくても、それなりに刺身としておいしくまあまあなボリュームで食べられます。ちなみに、我が家の最近のお刺身は最も安いイワシです。1キロ350円くらいで、新鮮であれば、ショウガとネギがあればおいしいです。

小島瑞生より:

2013 年 11 月 05 日 05:05:22

ブラジルは魚がけっこう豊富なのですね?、スイスと大違いです(笑)。仕方がないので、自給自足(→川・湖で釣り)で魚調達しようかな……^_^;

oouraより:

2013 年 11 月 05 日 16:23:04

〉小島様
 ブラジルは基本的に川魚もかなり食べます。ヨーロッパもニジマスがあると思いますが、生の刺身は厳しいけれど、結構燻製して薄切りにしたカルパッチョみたいなのはおいしいです。スイスでは既におなじみでしょうか?刺身とまでは言わないけれど、半生な感じは楽しめます。いずれにしてもヨーロッパで生の魚を食べられる環境は敷居が高そうですね。イワシが安ければ、酢漬けはどうでしょうか?スペインとかポルトガル風でもなんとなく生魚を食べた気分になれそうな気もしますが…やっぱりお刺身とは言えないですね。もと植民地の歴史が色濃いブラジルだけに、無いものは作るしかないというお国柄ではある気がします。昨日も、日本でちょっと前にはやったらしい塩麹、ブラジルで誰かが作った商品がやってきました!!

小島瑞生より:

2013 年 11 月 06 日 05:46:21

スイスでよく食される魚といえば、断然スモークサーモンですねー。スモーク(?)鱈もよく見かけます。あとはイワシの缶詰とかですかね。ニジマスやタイも売っていますが、生で食する勇気はありません…@_@。イタリア語圏だとイタリアから魚介類が来るのですが、あまりフレッシュそうに見えないんです(苦笑)。スペインとかまで南下すればさすがにおいしい魚介類タパスとか食べられるんですけどね!
確かにブラジルは移民が多いのでフロンティア精神が旺盛なのに比べ、スイスはどちらかといえば周りの大国たちから身を守るため、保守的なところがあるので無いものは無しでなんとかする、みたいな精神なのかもしれません(笑)

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