スペイン

スペイン:バレンシア

大田 朋子(おおたともこ)

職業…ライター、エッセイスト、講演家

居住都市…ブエノスアイレス(アルゼンチン)
→ケント(イギリス)
→バレンシア(スペイン)

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2013年11月、スペイン・バレンシアにオープンした『Más Soja』(マス・ソハ)。バリエーション豊富なオーガニック豆腐製品、マクロビオティック食品、日本の家庭料理に欠かせない醤油、味噌、調味料類、麺類などの日本食材を扱う

2013年11月、スペイン・バレンシアにオープンした『Más Soja』(マス・ソハ)。バリエーション豊富なオーガニック豆腐製品、マクロビオティック食品、日本の家庭料理に欠かせない醤油、味噌、調味料類、麺類などの日本食材を扱う

日本企業があまり進出しておらず、日本人がそこそこにしか滞在しない海外の中都市、小都市、村では、日本食材の入手の困難さに骨を折っている人も多いと思います。私もその1人で、海外生活が15年を超え、年齢的にも和食を毎日の食卓に取り入れたいと日々切望し始めた昨今。スペイン第3の都市バレンシアに住み始めてからは、和食の材料の品薄さにため息をもらしていました。中華街エリアでキッコーマンのお醤油やうどん、のり、カレーのルーなどは手には入りますが、ふっと思い出して食べたくなる「おふくろの味」的な和食の材料は揃えるのに苦心していました。


そんな中、昨年11月、バレンシアに『Más Soja』(マス・ソハ)がオープンしました。店名の『Más Soja』(マス・ソハ)は、直訳すると「もっと(Más)大豆(Soja)を」といったところでしょうか。絹、木綿、厚揚げ、油揚げ、ハンバーグなどバリエーション豊富なオーガニック豆腐製品、マクロビオティック食品、日本の家庭料理に欠かせない醤油、味噌、調味料類、麺類などの日本食材を扱います。オーナーは日本人の黒田京子さん。


私が感銘を受けたのは、日本人オーナー黒田さんならではの「かゆいところに手が届く」品揃えだけでなく、ご主人がスペイン人とはいえ、在7年で現地でお店をオープンした黒田さんという日本人女性に対してです。スペインでお店を開く=起業するにあたり、スペインビジネスならではの「洗礼」を受けたことは容易に想像できます。お店を開くまでのストーリーや、そもそもなぜ、日本食材/オーガニック大豆商品を扱う店を開業したのでしょうか。
そのあたりについてお話を伺いました。


『Más Soja』(マス・ソハ)のオーナー黒田京子さん

『Más Soja』(マス・ソハ)のオーナー黒田京子さん

―黒田さんの自己紹介や開業までの経過について教えてください。

(黒田さん)親が商売をしていたせいもあってか、小さいときから自分の店を持ちたいと思っていました。大学で商業・マーケティングを専攻し、店舗プランナー・店舗販売促進、通販販売企画などを経験し、将来の夢を膨らませてはいましたが、結婚・出産後にスペインに移住したため、お店を持つことは半ばあきらめていました。

移住してからは育児の傍ら、寿司レストランのキッチンや結婚式場での寿司実演、和食の料理教室、観光通訳の代理店業務などを経験し、一昨年、とあるオーナーに頼まれて市場内に寿司のテイクアウト店を開業しました。

しかしながら、勤務時間と家事や育児の時間のバランスがうまくとれず、半年ほどでリタイア。非常に残念な気持ちで終えたため、そのとき学んだことを生かして、今回は自分の店に挑戦することにしました。


開業までの経緯ですが、Más Sojaは市役所が管理する市場(いちば)内にあるため、さまざまな細かい申請が必要で、しかも許可が下りるまでにかなりの時間がかかりました。日本とは違い「何と何が必要です」と一度に説明してくれる場所はありませんから、各関係機関に出向き、何がいつ必要かを確認する作業にかなりの時間を割きました。

また、書類の提出をしても、時々催促の連絡をしないとなかなか手続きを進めてくれず、何度も電話でのやりとりをする羽目になりました。自分の思い通りに事を進めたかったら、自分がどんどん動くしかないのがこの国のスタイルなので、そこは随分、鍛えられました。


メルカドの限られた空間に黒田さんのセレクト商品が所狭しと並べられている。思い入れがある一つひとつの商品が愛しく思えてしまう

メルカドの限られた空間に黒田さんのセレクト商品が所狭しと並べられている。思い入れがある一つひとつの商品が愛しく思えてしまう

―どうして日本食材/オーガニック大豆商品を扱うお店にしたのですか?

(黒田さん)ファッションを扱うお店には「セレクト・ショップ」というカテゴリーがあります。オーナーが、自分の感性をフィルターにして独自に選んだ商品を並べているお店で、お客様は、そのオーナーのセンスを気に入った方達です。私は、その「セレクト・ショップ」を、日本の食材を扱う店として実現したいと思いました。私が日常で使うもの、使いたいものを選び、提案していくことで、お客様にレストランの日本料理ではなく、現代日本の家庭での食生活を感じてもらいたいと考えました。オーガニック食材も、私が普段の食生活で和食に使っている食材を中心に揃えています。


―バレンシアは日本食材が手に入りにくいように見受けられるのですが、商品は主にどこから仕入れていますか?

(黒田さん)オーガニック豆腐製品は、マドリッドに工場があるSOJHAPPYの製品を中心に扱っています。その他の日本食材は、スペイン国内に拠点のある日本食材輸入会社を複数利用しています。


バリエーション豊富なオーガニック豆腐製品やマクロビオティック食品

バリエーション豊富なオーガニック豆腐製品やマクロビオティック食品

―気になる客層や売れ筋商品は?

(黒田さん)近隣にお住まいの方がほとんどです。和食に関心のある方、マクロビオティック、ベジタリアン、セリアック病や高コレステロールなどの問題を抱えていらっしゃる方が来店されます。

売れ筋商品は、木綿豆腐、うどん、醤油各種。スペイン人で日本食に興味のある方のほとんどが、健康志向の方たちです。

マクロビオティックやベジタリアン食に興味のある方達で、お味噌汁を日常的に作っている方もたくさんいらっしゃいます。

また、スペインの家庭では肉をステーキ・カットにして焼いて食べる習慣があるため、お豆腐も硬めのものをカットして焼いて食べる方が多いようです。
そのため、木綿豆腐をより硬くしたお豆腐、お味噌、わかめ、醤油などが売れています。


筆者が泣いて喜んだ味噌類の種類も豊富だ

筆者が泣いて喜んだ味噌類の種類も豊富だ

―お店の特徴を一言で言うと?
(黒田さん)一言で言うと…、難しいですね。『現代人のためのヘルシー&モダン和食の食材店』でしょうか?

単に食材を売るだけではなく、レシピを配布したり、料理教室でアイデアを提供したりと積極的に和食を広める活動を行っています。これから、手軽に食べられる調理済みの豆腐製品のバリエーションを増やし、日常の食事にもっと取り入れていただきたいと考えています。


Más Sojaはメルカド(市場)内にあるので、「スーパーでの買い物と違い、商品やレシピについて話をしたり、世間話をしたりと、お客様とのコミュニケーションで信頼関係を築いていけるのが最大の魅力」という黒田さん。お客さんとの距離感や信頼関係を大切にしている黒田さんらしく、「常連のお客様からはご要望をお聞きして、店舗の改善に役立てています」といいます。お客さんの顔を思い浮かべながら、商品をセレクトしている姿が浮かびます。

市民の台所のメルカドに日本食材を扱うお店ができたこと。食に関しては、ともすれば保守的なバレンシア人の食卓で、和食が市民権を得ていくのに一役買っていくことでしょう。

これからも、Más Sojaの動きに目が離せません。



●店舗情報
『Más Soja』
住所:Barón de Cortés, s/n, Mercado de Ruzafa, puesto bajo 98-99-100, 46006 Valencia
電話:(34)644 42 42 56

営業時間 
月曜日 11:00-14:00
火曜日ー金曜日08:15 - 14:00
土曜日 11:00-15:00

Facebook: https://www.facebook.com/massojavalencia


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