南アフリカ

南アフリカ:ヨハネスブルグ

及能 直子(きゅうの なおこ)

職業…会社員
居住都市…ヨハネスブルグ(南アフリカ)

前の月へ

2024.5

次の月へ
S M T W T F S
   1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

スーパーで売っているパップ(粉)。見た目は小麦粉のようです。2.5キロ入りで約190円

スーパーで売っているパップ(粉)。見た目は小麦粉のようです。2.5キロ入りで約190円

南アフリカにきて最初に思ったことの1つは、太った人が多いことです。それも、高カロリーの美味しいものを食べてばかりのお金持ちはともかく、貧しい黒人(特に黒人女性)に太っている人が多いのは疑問でした。先日の新聞で、肥満にまつわる興味深い記事を読みました。

記事によると、某製薬会社の調査によれば、南アは世界で3番目の肥満国であり、人口の61%は肥満体型であるとのことです。肥満の原因は、炭水化物の過剰摂取だそうです。特に、炭水化物の中でも、白いパンやジャガイモなど、精製されて消化吸収されやすい状態の炭水化物(refined carbohydrates)が含まれる食品が主な原因とのこと。南アでは、この炭水化物の代表的な食品が、国民食と言うべき「パップ(pap)」と呼ばれる食べ物です。パップは、トウモロコシの粒をすりつぶして粉にしたものに、お湯を加えて捏ね上げ、モチもちした柔らかいパンのようなものです。主に、シチューなどの煮込み料理や肉料理に添えて食べます。日本人にとっての、お米のような存在です。呼称は違いますが、パップに類似する食べ物は、ほとんどのアフリカ各国で見受けられます。


パップの粉にお湯を加えて捏ねると、おもちのようなパンになります。これに肉の煮込み料理などをからめ、手で食べます

パップの粉にお湯を加えて捏ねると、おもちのようなパンになります。これに肉の煮込み料理などをからめ、手で食べます

このパップ、南アでは、特に黒人の食生活とは切っても切り離せないほどの存在です。スーパーに行くと必ず売っていますし、何よりパンより安く、腹持ちもいいとのこと。貧しい人にとって、パップのように腹持ちが良く、安価な食べ物が人気なのは理解できますが、記事によると、このような食品が腹持ちの良さと引き換えに肥満体型にさせ、特に、安価なパップを主食とすることしかできない貧しい人たちが肥満からダイエットができない状況を引き起こし、結果的に南ア人の肥満率を押し上げているとのことです。

確かに、お金があればパップの代わりに、お米や全粒粉のシリアルを食べたり、野菜や魚中心の食生活にするなど選択肢もありますが、その日暮らしの貧しい人にとっては、食生活を変えるのは簡単ではなく、腹持ちの良いパップ以外の選択肢はないと言っても仕方がないと思います。


南アのケンタッキーでは、チキンとパップのセットがあります。ご当地メニューでしょうか!?(南アKFCウェブサイトメニューより www.kfc.co.za)

南アのケンタッキーでは、チキンとパップのセットがあります。ご当地メニューでしょうか!?(南アKFCウェブサイトメニューより www.kfc.co.za)

また、記事では、貧しい人たちの住む地域は、たいていは犯罪率の高い危険なエリアで、人々が安易に外に出られないことが運動量の低下につながり、運動量の低下が人を太らせ、さらに外に出ることをおっくうにさせ、また太る・・という悪循環に陥らせていると言っています。確かに、南アは治安上の問題もあり、車社会なので、運動量は圧倒的に少ないと感じます。

南ア人の肥満は、単なる栄養の問題だけでなく、貧困や治安も関係しているのです。




レポーター「及能 直子」の最近の記事

「南アフリカ」の他の記事

タグ:

  • 1016 ビュー
  • 2 コメント

2 - Comments

かなやより:

2014 年 05 月 28 日 14:04:29

ひとくちに肥満と言っても、奥深い背景がありそうですね。

道下より:

2014 年 05 月 28 日 17:44:45

治安が遠因の肥満とは想像もできません。貧富の差もあるでしょうから一概に肥満率の高さを分析できないでしょうね。やはり、南アの抱える根本的な構造なのでしょうか。

Add your comments

サイト内検索

Name(required)

Mail(will not be published)

Website