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台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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決勝戦の松山高中(ソンシャンガオジョン)の応援席の様子

決勝戦の松山高中(ソンシャンガオジョン)の応援席の様子

 これまで、女子の選手を紹介する事が多かった台湾の高校バスケ・HBLですが、今回は男子の事を紹介したいと思います。

 HBLは、女子よりも男子の方が盛り上がります。
 また、比重も男子の方に多く置かれる傾向にあります。

 上の写真を見ていただきたいのですが、通路にまで観客があふれていました。近年は、多くのファンが熱気ある戦いを見たくて、会場を埋めるようになりました。

 そんな男子・決勝戦で見たアツいものを紹介したいと思います。


松山高中のキャプテン・胡瓏貿(フー・ロンマオ)

松山高中のキャプテン・胡瓏貿(フー・ロンマオ)

 決勝は、2連覇中の松山高中と8年連続で4強入りしている南山高中(ナンシャンガオジョン)の対戦でした。

 その松山高中の中心選手は、キャプテンで1年の時から優勝を経験している胡瓏貿。昨年の2連覇のときも活躍し、U-18の台湾代表にも選出されました。


松山高中の黄萬隆(ファン・ワンロン)ヘッドコーチ

松山高中の黄萬隆(ファン・ワンロン)ヘッドコーチ

 その松山高中を率いるのは、黄萬隆HC。10年以上のキャリアを持ち、昨年のU-18代表のHCも務めました。

 そんな2人の歩みは、松山高中の連覇の歩みそのものと言えます。

 昨年のHBL・準決勝リーグの時でした。
 初優勝のときから続いた連勝記録が、ブザービーターで29で止まった時、胡瓏貿をはじめ選手の何人かは悔し涙を流しました。

 黄萬隆HCは冷静に慰め、気持ちを切り替えるよう言いましたが、一度止まった流れに逆らえず、その後の2試合でも負け、4勝3敗の4位で決勝トーナメントに進出しました。

 決勝は最大15点差の劣勢を跳ね返して、2連覇を達成しました。
 しかし、この2人は表面的に喜んでいたものの、その負けた3試合がどこかでひっかかっているような感じに見えました。


1月の準決勝リーグ最終戦の様子

1月の準決勝リーグ最終戦の様子

 迎えた今年のHBL。

 松山高中は、2次予選、準決勝リーグで、昨年連勝記録を止められた泰山高中(タイシャンガオジョン・昨年4位)に勝てませんでした。

 最終戦は、今年の決勝と同じ南山高中戦。

 この試合の第2ピリオド終了直前の事でした。

 南山高中のフリースローの時に、胡瓏貿がポジションを間違えたため、黄萬隆HCから「(ポジションが)違うぞ!何やってるんだ!」という声が聞こえてきました。

 第2ピリオド終了時、胡瓏貿がベンチへ戻ってから、黄萬隆HCは上の写真のようにその事を厳しく叱責しました。
 その内容は、「お前はいつから自由になったんだ!そんなに偉くなったのか!」というものでした。

 フリースロー1投目は、無条件に与えられるものなので、ポジションを気にしなくてもいいと思うのですが、黄萬隆HCはそうした妥協を許しませんでした。
 また、信頼を置いているキャプテンだからこそ厳しく接して、チームの秩序を守る、という姿勢を見せた瞬間でもありました。


2人とも涙を流しながらの抱擁です

2人とも涙を流しながらの抱擁です

 それから約1ヶ月後に迎えた決勝トーナメント。

 松山高中は、準決勝で以前紹介した三民家商(サンミンジャーシャン)を逆転で倒し、決勝でも南山高中を序盤から圧倒して、3連覇を達成しました。

 お互いに色々な重圧や葛藤があった事でしょう。
 
 もしかしたら、胡瓏貿には4枚目の写真のような事がこれまで何度もあって、「なんでいつもオレばかり怒られるの…」と思っていたかもしれません。黄萬隆HCもそうした感情を理解しながら、厳しくしていたかもしれません。

 でも、全部上の写真の感動の抱擁で、そうした感情やわだかまりは吹っ飛んだのではないでしょうか。この1枚は、両者が共に歩んだ3年間が凝縮されているような気がします。

 私もシャッターを切りながら、思わず涙、涙…でした。


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