オランダ

オランダ:アムステルダム

フリードリヒス カオル

職業…フリーライター

居住都市…アムステルダム市(オランダ)

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オランダ語をアルファベットから学ぶ難民の子どもたち(画像提供:OnderwijsB)

オランダ語をアルファベットから学ぶ難民の子どもたち(画像提供:OnderwijsB)

 オランダの小学校や中学校では、定期的にではありませんが、1年に数回、転入生を入学させることがあります。転入してくる理由はさまざま。引っ越し、両親の離婚、いじめ、などなどがその主な理由だそうです。しかし最近では、外国からの転入生も増えています。彼らの出身国はさまざまですが、この2、3年でシリア難民の子どもたちが多く転校してくるようになりました。

 こうした難民の子どもたちは、オランダ語が全く話せません。中には、アルファベットを知らない子もいます。しかし、1週間ほどでAからZまで26文字を瞬く間に覚え、オランダ語の歌を歌い、クラスメートたちと学び、遊んでいる間に言葉は確実に進歩します。

 驚くことに難民の子どもたちは、期末試験を受けると、オランダ人の生徒たちよりも、ずっと良い点数を取ったりすることさえあります。その理由はよく分かりませんが、学校が楽しくて、集中して学ぶためではないか、と教師たちは推測しているそうです。

 オランダ語は難しくても、数学や化学など、祖国で学んだものと同じ内容であれば、うれしくて懸命に点数を取ろうと努力するからではないでしょうか。学校に通うことを何よりも楽しみにしていることが、彼らの勉強に対するモチベーションにつながっているのでしょう。


オランダ式?のランチを楽しむ生徒たち(画像提供:Nom)

オランダ式?のランチを楽しむ生徒たち(画像提供:Nom)

 そのような子どもたちは、歴史や社会、道徳の時間になると英雄扱いです。教師の代わりに、黒板の前に立ち、覚えたてのオランダ語で祖国の現状を説明できるからです。彼らは、一般的なニュース報道よりもずっと確実に、そして真実を伝えることができるため、クラスメートたちも尊敬しているようです。

 難民の子どもたちは、単独ではなく複数で同じクラスに入れられることが多いのですが、単独で入ってくる子もいます。そういう子は、フランス語や英語が流ちょうだったり、祖国での成績が優秀だったりと、勉強が好きな傾向にあるようです。オランダ人のクラスメートたちよりも小柄なシリアの子どもたちに対するいじめなどは、ないのでしょうか?

 いじめというより、言葉ができないことをからかったり、着ている服がオランダ人の子とはちょっと違っていたりすることを指摘して笑われたり、といったことは、残念ながらあるようです。しかし、そんなときは担任がケアすることはもちろんですが、クラスの中の「有志」が出てきて、からかった方の過ちを徹底的に訂正します。からかう側は、複数のことがほとんどですし、有志は1人のこともありますが、昼休みなどの時間に、有志はからかった側の子どもたちを呼び、クラスメートのいる前で、きちんと誤りを指摘するのです。

 すると、からかった側は、公衆の面前で的確な指摘をされて恥ずかしくなり、これに懲りてからかうことをやめるといいます。いじめへの適切な解決法をオランダ人の生徒たちが身を持って学びつつ、難民の子どもたちが快適に過ごせるよう、学校側も手厚いケアを怠りません。「将来は、オランダ人になって(オランダ国籍を取得して)医師になって働きたい!」と流ちょうなオランダ語で夢を語る生徒の姿は、頼もしいばかりです。





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